Fairy Song

時雨青葉

【第1幕】漆黒に揺蕩う碧の底

幕開け

呪いの始まり



 一つ、漆黒に揺蕩たゆたあおの底

 二つ、紅蓮のいただきに伸びる赤回廊せきかいろう

 三つ、あかつき集まるとう水晶

 四つ、紫縞しじまとばりの降りる先

 五つ、白霧はくむの迷いの中心

 六つ、桃葉ももはそのの大樹木

 七つ、黄砂と海青かいせい狭間はざま

 八つ、新緑の螺旋らせん



 ぐるぐる巡る終わらぬ唄は

 薄鈍うすにびの座にて終焉しゅうえんを待つ





 ◆ ◆ ◆



 許さない。

 許さない。



 何度も何度も、それに向かって腕を降り下ろした。



「お願い! やめて!!」



 彼女が必死に叫んでいる。

 やはり、これを壊されるのは嫌らしい。



 それもそうだろう。

 自分たちにとって、これを壊されるのは未知の恐怖だ。



 いい気味だ。

 彼女の金切り声を無視して、それを壊すことに心血を注ぐ。



 当然の報いだ。

 彼女は罪を犯した。

 決して許されないことをしたのだ。



 殺すなんて、生ぬるいことで終わらせない。



「お前はこれから、ずっとひとり。」



 それを穿うがつ度に呪いを込める。

 固いそれに、徐々にだがひびが広がっていく。



 この先一生、生まれ変わったとしても、延々とこの呪いに苦しめばいい。



 許さない。

 絶対に。

 私とあなたは、これからずっと同じ道を辿る。



 あなたが私から奪ったように。

 この先は、私があなたから奪い続ける。



「私は、お前を許さない!!」



 強く思いを込め、最後の一降りを穿うがつ。





 甲高い音を立てて、それはとうとう―――




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