そう、作品に敬意を称して、まるで素足のようにまっさらな生地の滑らかさ、とでも言おうか。
実に、ピュアな青春、オーソドックスなボーイミーツガール。
安心して読める恋愛小説である。
たとえ、『鬼に金棒』の類義語が『謎の彼女に黒タイツ』と提示されても、だ。
安心して読める恋愛小説である。
都会の喧噪から田舎の情景。
主人公の尖った性癖や言動、秘密と葛藤を抱えた美少女、取り巻く幼なじみやイケメン親友など、対比と落差の日常や人間関係も程よいテイストだ。
きちんと評価したいのは、主人公の成長と、終盤の困難に立ち向かう行動力だ。ちゃんとヒロインの『脚』や『タイツ』だけに留まらず、彼女の存在自体を好ましく捉えていくのも、生地のしっかりとした、いや失礼、素地のしっかりとした起伏のある物語として展開されていく証左であろう。
そうして見ると、主人公の口調やフェティシズムに見る痛々しさも、だれもがどこかでなにかに、そう、持っていた幼さ、切なさ、思春期特有の気恥ずかしさを思い出す。
我々が、この安心にして読める恋愛小説に、どこか抵抗を感ずる様を、気恥ずかしさを誤魔化すための、それ。それこそデニールの厚さではないだろうか。何を言っているのだろうか、私は。
3度も繰り返した。
もういいだろう、安心して読める恋愛小説である。
言うことがあるとすれば、web用にスペースや話数を区切って、初出の人名くらいはルビでも振ってくれれば、読みやすいと感じる読者が増えるくらいだろうか。