もののけマキシマム
黒瀬
第1話 コーくんとの思い出
小さな団地に1人の女性がいた。
名を朝日葵。通称アオちゃん。
ボブヘアの綺麗な女性だった。
そんな彼女はついこの間この団地に引っ越してきた。
家の掃除をしていると古い学生リュックの中から茶色くなってしまった写真が1枚。
そこには学校の正門で若かりし頃の葵とその隣には身長が葵と変わらないぐらいの男の子で学ランを着て狼のような鋭い目付きをした男の子と肩を組んでいる写真がでてきた。
「コーくん·····」
思わず声が出た。
そう彼は私の初めての恋人だった。
その時、学生の思い出がバックアップされた。
嫌だった。嫌。
学生は地獄だった。
葵は毎日虐められていたのだ。
考えるだけで心臓が縛られた痛みに襲われる。
特にされたいじめと言えば
プリントを破り捨てられたり
自転車のサドルを盗まれたり
階段から落とされたり·····
それから私は人と関わることを辞めた。
そんなある日、いつもどうり私の自転車の鍵が無くなった時に運命は訪れた。
鍵を北村孝ことコーくんが持ってきてくれたのだ。
「あの·····これ、キミの?」
と右下を見ながら言う。
私と話すのがそんなに恥ずかしいのか。
見られたらそんなに周りから言われるのか。
と思ったがそれは違った。
その後私たちはすっかり仲良くなっていったのだ。
いじめられっ子に物理的に袋叩きされた時なんかはコーくんが駆けつけてくれた。
「なんで、そこまでされてこんな学校に来るの?」
と手を差し伸べ疑問そうに聞いてきた。
「コーくんが学校にいるから」
と照れながら言うとコーくんは呆然とこちらを見ていた。
「な、なによ!」
と怒ったふりをして言うと、コーくんは私の唇に口付けをした。
それから私たちのリア充生活が始まった。
休みの日には遊園地に行ったり
私の好きな映画鑑賞を一緒にしたり
私の好きなブリトーを食べたり
私の好きな歌を一緒に歌ったり
私の好きな·····私の好きな·····
気づくと顔を真っ赤にして号泣していた。
その訳は、コーくんはその冬他界したのだ。
原因は私のせいだろう
いじめられっ子と馴れ合い
いつしかコーくんまでもいじめの標的となったと
だろう。
そう。だから。コーくんを殺したのは私のようなものだ。
その年私は死ぬぐらい泣いた。
死にたかった。死ぬ勇気がなかった。
考えることを辞め目を擦り
葵は写真をカバンに戻し掃除の続きを始めた。
すると窓が開く音がした。
恐る恐る窓の方へ近づいてみると
窓は完全に開いていた。
その直後、付近においてあったオンボロラジカセが鳴き出した。
『ーーーブブブブ。ーーー緊急のニュースです。立てこもっていた女性の身柄を確保したところ、顔が無く、歯が真っ黒の女性をだったと言う信じ難いニュースが入り込んできました。ーーー調べを続けるとその女性はお歯黒ベッタリという妖怪ということが判明し、政府は霊界の存在を認めこれから話し合う方針と発言しました。ーーーブブブブバッーーー』
とラジカセが鳴いた。
すると窓の奥のベランダから声がする。
「アオちゃん。ブリトーでも食べに行くかい?」
葵は目を大きく開いた。
「こ、こ、ここここ、コーくん!?!」
葵はこれまでに声を荒らげて言った。
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