第1話-3
一言で言ってしまえば、我が家は呪われているんです。
……まあ信じる方が無理ですよね。
見ていただければすぐ分かるものもあるのですが……ご気分を悪くさせてしまうでしょうから……。
この呪いは寄生虫のようなものです。
放っておけばどんどん体が蝕まれていき、最後は死に至ります。
そこでこのピアスや耳飾りです。
呪いを完全に防いでくれるわけではないのですが、侵食の速度を緩めてくれるんです。
我が家の男児は中学生、高校生のときに親から呪いが受け継がれます。
ああ、強制的に移されるわけではなくて……ある日寝て覚めたら呪いが勝手に移っているんです。
その日から目の色もこんな風になりました。
我が家は昔、それなりに術師――呪いなどのエキスパートの人間のことです――を輩出していたらしく、この家には様々な術が仕込まれているんです。
その一つが呪いを無効化するというもの。
そういった機能があるはずのない学校や外にいるよりこの家にいる方が安心安全ということで、呪いにかかった人は学校を辞め、家に籠るようにするんです。
あと外に情報を漏らさない目的もありますね。
この呪いは他の家の術師にかけられたものであることだけは分かっていて、今もその一族が俺らを狙っている可能性も否定できないので。
「だから桜さんが持っているその写真は、呪われる前の俺ってことです」
「ふうん……まあ、あなたの容姿については説明がついたとして。このお見合いの意味は?」
「一番の理由は呪いの進行と関係があります。なぜか呪われた人と近い年齢で霊力の高い女性が一緒にいると呪いの進行が抑えられるそうで。お見合いによってそういった方を見つけ、一緒に暮らしてもらえれば俺の寿命は延びる、ということです」
「なるほどね〜。変な呪い……それとも呪いってみんなこうなの?」
「いいえ、これが特殊なんです……だから俺は……」
春夢さんはそこまで言ってハッとしたような顔をすると「何でもないです」と笑った。
本人が話したくないなら無理に聞く必要はないだろう。
私はもう一つ気になったことを質問した。
「ねえ、その『霊力の高い人』ってどうやって見つけるの?」
「……ええ、簡単で正確に見つけられる方法があるんですよ」
このとき、春夢さんの纏う空気が変わった。被ってた猫を脱ぎ捨てた感じ。
「二十分」
「え?」
「さっきこの家には色んな術が仕込まれてるっつったろ? 霊力が高くないと、この家には二十分以上いることができないようになっている。つまり二十分経った今もここにいるお前は霊力が高いということだ」
春夢さん、いや春夢は立ち上がるとそのまま部屋の障子戸を開き、
「でも性格が合うかは別だからな。お試し期間として、お前にはしばらくここに住んでもらう。……正直俺は嫌だね。お前みたいな態度だけでかいやつ。じゃあ」
と言うと部屋を出ていった。
シーンとした空間。
しばらく呆然としていた私だったが、ししおどしの音で覚醒する。
「やっぱり詐欺じゃない! 何なのあいつ――!」
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