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 電車がホームに滑り込んできた。僕はボストンバッグを持ってベンチから立ち上がる。彼女は俯いたままだった。


「じゃあ、行くよ」


 電車から人が降りてくる。彼女はこくりと頷き、電車に乗る僕をドアの前で見送る。ドアが閉じた瞬間、夕暮れ色に染まった彼女の頬には、一筋の涙が垂れていた。

 僕はこれから、彼女と離れて遠い街で暮らすことになる。



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※綺想編纂館 朧(@Fictionarys)様主催の小説企画「文披31題」参加作品です。

Day 7:洒涙雨

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