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「これがヘイケボタル。で、これがゲンジボタルだ」


 幼い頃、初夏の夜、家の近くの川べりには蛍が舞っていた。懐中電灯で蛍を照らしながら、父はすらすらと教えてくれた。


「なんでかな。あのときのことが、やけに思い出されるよ」


 棺桶の中に横たわる父にそう話しかけた。家の庭に、迷い込んだ蛍が輝きながら飛んでいた。


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※綺想編纂館 朧(@Fictionarys)様主催の小説企画「文披31題」参加作品です。

Day 5:蛍

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