名もなき物語たち

176

　起きたら猫になっていた。伸びをした後、私は自分の前足を見る。靴下を履いているように足先だけが白い。部屋の姿見には、見事な灰色のはちわれ模様が映っている。なんでこんなことに？　仕事はどうしよう？　焦った気持ちが、ゆっくり消えていく。眠たくなってきた。肉球に当たるシーツの感触が気持ちいい。このままどうするか考えよう。私は瞼を閉じた。