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 選手の控えテントは、厳冬の氷のような緊張感に満ちていた。集中する者、筋肉を奮いおこす者。襷を繋ぐために何年も費やしてきた彼らの肌からは湯気が立っている。私は手袋をしてバイクを暖気させる。制服の下の背中に汗が伝う。彼らの闘いを、私たちは全力で支えよう。

 号砲がなったと同時に、選手たちが走り始めた。白バイにまたがった私の名前がアナウンサーに読み上げられた。

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