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昔から人前で声が出なかった。落ち着けば出る。暗い部屋のなか、一人で布団にくるまって「ア」と言ってみる。何もおかしくない。なのになぜ、私は人前だと声が出ないのだろう。話そうとする私に、「ふざけないで」と目を吊り上げて声を荒げる人々の顔が頭をよぎる。もう一度声を出してみる。
ア。
私にしか聞こえない、誰にも届かない私の声が、暗闇に溶けて消えた。
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