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 苺を丁寧に水で洗い、ヘタを切り落とす。鍋に砂糖と一緒に入れて火にかけると苺の水分が出て、芳醇な甘い香りが立ち込めた。苺は深いルビー色に変わっていく。


「私、この苺の甘煮だいすき」


 もうこの世にいない娘の声が聞こえた気がして振り向いた。誰もいない。ただ鍋が、くつくつと音を立てていた。

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