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「引き返そう」


 吹雪の中、無線から聞こえたのは無常な言葉だった。凍傷になりかけの指が、無線を強く握り締めた。


「なぜです! 目の前に、峰があるんですよ……何年も準備して目指してきた峰が……」


 私は震える唇で訴えた。私もわかっていた。引き返さなければ、命を落とすということを。涙は凍りつき、泣くことも許されない。

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