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 納涼祭に行かなくなったのは母親が病気になってからだ。母親は「気にせず行っといで」と落ちくぼんだ眼で笑ったが、私は浴衣姿で走る同年代の子らを横目に、家の縁側に座って花火が打ち上げられるのを待っていた。母の命の灯が花火のように消えてしまったら、と怖かったのだ。


 ドン、と打ちあがる音がする。どうか散らないでと祈りながら、涙でにじむ夜空に咲く花を見つめていた。

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