第16話俺のケツと魔力中年マジカルリョーシュの逆襲②

 カリンたちと別れて数刻。地下の祭儀場に向かってさちよたちは驀進していた。炎の炎弾を操り、敵を狙撃していくさちよと攻撃を氷の壁でいなしていくガブコ。


「ガッハッハッ!ぬるい、ぬるいぞ!」

「一応対魔戦法叩きこんだんすけどね」

「ん?ああ、戦いにくいぞ。たしかに」

「戦いにくいの勢いじゃないっすけどね」

 蹴散らされてく、部下を尻目にため息をついた。この人はほんとに強い。昔、王都近くの貧困街でチンピラだった自分をぶっ飛ばし弟子にした。くだらねぇことしてないでついてこい。彼女はやさぐれていた私をねじ伏せ、鍛えてくれた。

「師匠…」


「これでも、結構余裕はないんだぜ。対魔石の盾を中心にした、人海戦術。中距離遠距離を主軸にした波状攻撃。並大抵の魔法使いなら1歩も進めねーよ。よく鍛えたぜ。ガッハッハッ!お前は立派だよ」

「…」


 あの頃と同じように笑いながら的確に顔面を撃ち抜く。いつも、不敵に笑ってて。かっこいい師匠。だけど、そんな師匠の元にいても自分は。


「俺もこの眼がねーと、ちっ、」

「眼?」


 ガブ子は長髪の合間から見えるさちよの瞳が普段と違うことに気がついた。


「その瞳って・・・」


 ガブ子が言い切る前にさちよが術の準備をする。術を展開しつつ、太もも付近にある瓶ホルダーから、数本の魔瓶を引き抜く。


「お前には悪いが一気に決めるぜ」


 さちよは魔瓶を取り出して、割る。炎の勢いが増す。


「狂え!舞え!乱れ飛ぶ炎弾に!踊りまくれ!『赫(ダブル)』・孔雀舞い(ガンダンス)!!」


 空中に浮いた炎弾が魔瓶の炎と合わさり緑や青や紫になり虹色と化す。

「ちぃっと、火傷するかもしれないが、我慢しろよ!ガッハッハッ!」

 広間にいた衛兵たちを一掃する。乱れ飛ぶ炎弾は次々に衛兵たちの意識を狩りとっていく。


「よしっあらかた片付いたな。おじゃましまーす!」

 異世界転移の儀式が行われてるだろう扉を蹴破る。中央に魔法陣。異様な魔力の充満を感じる。倒れる領主たち。檻に入れられた魔法少女たち。ひどい。

「檻に入れて魔力を搾り取ってやがるのか」

 魔法少女たちはかなり衰弱している。近隣の村から集められたのだろう。だが、それだけではない。この異様な空気中の魔力の濃さ。パミュッ!パミュッ!

「ん?なんだ?このおと?!、おえええ」

 師匠が吐いた。彼女の視線の先を見る。

「せんせ?おええええ」

 ぱみゅ、ぱみゅ、ぱみゅ

 領主の姿を見て吐き気を催した。フリフリのゴシックメイドをまとったおっさんが笑顔を振りまきながらスキップでやってきた。

「ふはははこれがわしの力!他の領主どもの土地もいただこう。あの生意気な女区長にも、わしの恐ろしさを見せつけてやる。ん?なんだ貴様ら」


「あんたにゃ、悪いが、魔法陣は壊させてもらうぜ」

「さっきは、いきなり戦闘中に魔道兵器ぶち込むのはひどいっすよ!退職するっす!退職金よこせっす」


「なぜ、今から死ぬやつに払わなければいかんのだ。わしはもう魔法少女No.50はおろか、1桁(シングル)にも届きうる存在だというのに」

 彼は手に持つ杖をくるくると回す。はじめてみる杖。だが、領主はもともと大した魔力もない人間だったはず。

「悪しき魔女どもよ!まじかる・りょーしゅが成敗してくれる」

「酒飲みすぎて、頭おかしくなったか?」

「領主さま~そんな変な格好に金使うんじゃなくて退職金」

「くれてやろう」

 倒れている別の街の領主の胸元をさぐり、金の入った袋を取り出す。そして、その袋をガブコに向かって放り投げた。

「あ?舐めてんすか」

 さちよは違和感にすぐに気づいた。

「ばか、待て!」

「みらくる・りょーしゅ♡」

 領主はくねくねと体を揺らしながらもう1本別の杖をとりだした。杖をくるりと回して、魔法を放つ。空中にはばらまかれた金貨。それが部屋に降り注ぐ。

「死ね悪しき魔女ども『ゴールド・ラッシュ』!!」

 次の瞬間に金貨は炎の礫と化しガブコに襲いかかる。

「っす!?」

「ガブこ!!」

 この魔法は、『千変』?

「おいおいおいまてまてその魔法はカラスウリの魔法だろ!なんでおっさんが使えるんだよ」

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