第9話おれは2人目の魔法少女にケツを剥かれる


「そ、それは…」


「それは?」


「しり…から…です…」


改めて言うのは恥ずかしいな。豪快だったからあまり、意識しなかったが、いまの少し潤んだ瞳といい、黙っていたら超美人なお姉さん。ちょっと恥ずかしい。声がしりすぼみになる。尻だけにな!


「ん?どした?」


「しりから…魔法の……出す能力です」


「は?」


「しりから魔法の杖を出す能力です!!」


「マジか?」


「大マジです」


「ぷっ、ふふ、ッハッハッ!!!」


あーもう!笑いたければ笑えよ!


「もういくつかマシな能力あったろ!がっはっはっは!」


「なかったんすよ!」


あの時、あの神さまが言ってた能力は2つだけだった。マシな能力があるならそっちが良かった。


「…そうか。それは厄介だな」


「厄介?」


「いや、こっちの話だ。天上(プラネタリウム)の杖の1本か。どおりであの杖、術師の力量と釣り合ってないんだな。」

「プラネタリウム?」

「そうだ。星や星座の名を冠する杖。神の御業によって作られた杖だよ」

天上の杖?なんだ。俺の杖、総称みたいなのがあるのか?あと気になるのが。


「釣り合ってない?」


さちよさんは谷間から杖を出し、クルクルと指先で回す。赤い杖が日光に晒される。数多の傷、幾重にも重なった傷、彼女の魔道の道が記されているようだった。


「歪なんだよ。あのポラリスって杖は。魔法ってのは、魔術師の才能やら魔法への理解力っつう本人の実力、魔術師や契約した精霊の魔力量、杖や魔道具の性能、これらが掛け算の関係で存在している。あたしたちでいうなら、杖が車、魔力がガソリン、運転手が魔術師ってところか。今の状況は赤ん坊が車運転してるような状態だ。あんま多用はすんなよ。魔力を使い切ったら今度は命が削られる」


「だから、魔瓶を」


「まぁな、死なれたら寝覚めが悪いだろ?本来杖と魔術師は二人三脚で成長するもんだ。だから、基本的に杖は1人につき1本だし、皆それを大事にする。死ぬ気で学び、修行する。もし、おまえの力が世に知られたら、100人の魔法少女からは当然、この大陸中の魔術師たちからケツを狙われるようになるってことさ。キツい修行積むよりお手軽だしな」


100人の魔法少女から狙われるなんて、ゾッとする。いや、ご褒美か?


「さ、て、と、情報量として杖を数本貰おうか。ケツをだせ!」


手をワキワキと動かしながら、さちよさんが迫ってくる。目が怖い!手が怖い!杖はおろか、けつ毛まで全てむしり取られそうな勢いである。


「逃げんな!」


「ひ、いや」


おれは森の中を逆走した。助けて!妹!助けて!ガブコちゃん!あちし、こんなところでバラを散らしたくない!!


「おらおらおら!」

「いやあああああ」


あと、もう少しのところで足を捕まれ、ズボンをひん剥かれた。


「あと2枚っ!あと1枚っ!」


「いやぁ、見えちゃう!ボロンしちゃう!」


「ボロンっていうなや!!生々しいわっ!!」


カッポーンといういい音とともに杖がぶち当たった。カリンの全力スイングである。その一撃が俺の意識を刈り取った。


ばんっ!ぱんっ!ぱんっ!パパンっ!ぱんっ!


「ケツいったいいいい!」


「どーせ!巨乳が!!いいんですよね!どーせ!何!森の中で!!おっぱじめようと!!してるんだよ! !!」


物凄い勢いでケツをたたかれている。ケツが!俺のケツが!2つに割れてしまう!!


「…ポケットを!たたくと!おしりが!ふたつ!もう1回たたくと!おしりが3つ!」


あ、やばい。カリンが怒りのあまり、おかしくなってきてる。目のハイライトがどんどん消えてるんだけど!!


「…ポケットを、たたくと、おしりが、4つ、もう1回たたくと、おしりがバーラバラ…ふふふ」


怖いよ!!!


なにがそんなに気に入らないのやら、めちゃくちゃキレてる。ケツが倍には膨れただろう俺に、さちよさんは近づいてきて


「邪魔が入った。まぁ、また今度の機会な!」

と、意味深な言葉を意味深にウインクしながら囁く。

「なあああああ!!!」

ついには、言語を失った妹の拳は俺のケツを赤く染めた。

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