第8話2人目の魔法少女に俺のケツが狙われている!
カリンが杖を掲げて、魔法を唱える。
「光の精霊さん、力をお貸しください!!彼のもの達に光の加護を!!『衣替(ドレスアッパー)』」
カリンが『道標の星(ポラリス)』を使って、見た目を城の衛兵に変えた。くさび帷子に鉄兜、中世の衛兵って感じだ。『道標の星(ポラリス)』は元々のカリンの魔法である姿を変える力の能力を拡張するものだった。街にはまだたくさんの兵士がいる。正面きって突入するのではなくて、変装してそれぞれの目的をはたすことにしたのだ。
「便利な魔法っすね。カリンさん、本当に魔名なしのNo.98っすか?このレベルの変身魔法はなかなかお目にかかれないっすよ!触らないかぎりは、本物に見えるっす」
「こいつぁ、おもしれぇ!甲冑の癖にめちゃくそに軽いぞ」
2人の魔法少女達も甲冑姿に身を包んで感嘆の声をあげた。
「よーしガブコ!せっかく甲冑を着てるんだ!潜入前の肩慣らしに久しぶりの師弟の闘魂魔弾ベースボールだ!」
「いいっすね!ばっちこーいっす!!変態さんも一緒にどっすか?キャッチャー頼むっす!」
「おいおい、おれは魔力なんてないんだぞ」
「甲冑きてるんだから大丈夫っすよ!ドーンと受け止めれば大丈夫っすよ!」
「それもそうだな!」
甲冑の胸部を叩き、魔弾を受け止めるべく、中腰に構えた。案外このコンビは仲が良いのかもしれない。さちよさんが炎弾をいくつも作り出し、一気に発射した。これがほんとの燃える魔球(物理)ってやつだな。対するガブコは氷でバットを構える。球とバットが触れるとジュッという音とともにバットがとかされる。残った魔弾がこちらに迫る。そういえば甲冑ってどのくらいの強度なんだろ?!視線の端で、カリンが叫ぶのが聞こえた。
「あ、でも、気をつけてね!わたしの魔法はあくまで、光の精霊さんに頼んで、見た目を変えてるだけだから。鎧甲冑をきてるように見えても、防御力は、元のままだよ」
「ぶるあああああああ!!!!」
炎が全弾俺に命中した。ダイレクトに衝撃と熱が伝わる。
「ぎゃああああ!助けて!!熱い!熱い!学ランが!大事な日本の思い出があああ!」
「ガッハッハッ!なるほどな!超凄いプロジェクションマッピングみたいなものか!なぁ、えろ助!」
「ああ!たしかにな!ってか加減しろよ!!あと妹!!そういう大事なことは先に言え!!」
地面を転がりなんとか火を消した。し、死ぬかと思ったわ!
「ぷろじぇくしょんまっぴんぐ?」
「なんすかそれ?」
言い得て妙だった。プロジェクションマッピングとは、映像を建築物などに映し出して、様々な演出をする映像技術だ。さちよさんは現代社会の技術にも通じてる。だったら、彼女も俺みたいに能力をあの金髪ロリ神様から、もらっているのか?
「変態さんも、潜入ミッションなんだから、ケツ光らせないでくださいっすよ!ケツが光る人間はこちらの世界にはいないんすから!」
「元いた世界にもいねーよ!!」
いてたまるかっ!そんな変態何人も!
「よしっ再開っす!今度はあーしが、投げる番っす!さっさ!キャッチャー頼むっす」
「鬼かっ!」
無邪気な顔して恐ろしい娘である。
「ガッハッハッ!おい、えろ助!ほらよ!」
「さちよさん、なんすか、これ」
さちよさんは小さな肩がけのバッグを投げて寄こした。中には小瓶が数本入っていた。瓶はコルクでしっかり栓がしてあり、何やら文字が複雑に描かれていた。中身は赤いモヤモヤがうっすらと光っていた。
「えろ助、お前、魔力ないんだろ?カリンも魔法こそ凄いが、残りの魔力量はすくねぇみたいだ。なんだか、魔法に魔力が追いついてないみたいだからな、餞別だ。あの街の魔道士程度なら追い払えるさ」
「あー!魔瓶っすか!じゃあ、あーしの魔法も詰めるっす!」
そういうとキバコは瓶と杖を取り出しブツブツと唱えながら魔法を詰め出した。水色のモヤが杖先から注がれていく。
「魔瓶ってたしかかなり高価なはず。こんなにもらって大丈夫なの?わたしたち路銀なんてほとんどないのだけど」
「ガッハッハッ!気にするな!心苦しいってなら少し同郷のえろ助と2人で話をさせろ。それでチャラだ。あたしの炎魔法とキバコの氷魔法の瓶詰めさ。いざと言う時には投げて使え。あと、2つは同時に使うなよ」
「なんで?」
ふたつ合わせれば、めちゃんこ強いんでは?
「危険なんすよ。空気を冷やしたあとに急激に熱したらドカーンっす!」
「そういうこった。えろ助、ちょっとこい!お前らは後始末頼むぞ!」
「えぇー!」
「久しぶりに稽古つけてやっから!な!魔力の残滓も回収しろよ!…行くぞ」
張り詰めたような真剣な表情だった。有無を言わさぬ様子に頷いてついて行くしかなかった。
「うぉっしゃー!久しぶりに師匠の稽古っす!あ、どっすか?カリンさんも一緒に!師匠は教えるの上手いっすよ!」
「え、わたしなんかが、いいの?」
「いいんすよ!これも何かの縁っす!師匠はただ胸デカいわけじゃなくて、器もでかいんすから!」
背中に彼女らの声を聞きながら、森の中をぐんぐんと進む。
あ、そうか。このシチュエーション!
茂みにお姉さんに連れ込まれた!
茂みにお姉さんに連れ込まれた!!
茂みにお姉さんに連れ込まれた!!!
なんだろう胸がときめく!
お父さんお母さんありがとう!
僕おとなの階段を登るね!
汗ばんだ彼女のうなじが色っぽい!
はぁはぁと息遣いが荒いのがえろい!!
しばらく歩いたあとに彼女は急に立ち止まり、振り向いた。瞳が潤み、張り詰めた表情だった。
「なぁ、えろ助!!」
「はい!えろ助です!!はじめてですが!不束者ですがよろしくお願いします!!!」
くそ、こんな時は!紳士に!そう!紳士さが大事なはず!
「あ、あぁ、よろしく。何、瞳を輝かせてるんだ?」
「こんなとこに連れ込んでなにを」
彼女の手には杖があった。つ、え?!さすがさちよさん大人の女性だぜ。男の喜ばせ方がマニアックだ!
「差し込むんですか?!ちょっとはじめては細いものがいいとはいいますけど!さすがに鋭利すぎませんか?いや、いいんですけど、さちよさんってばダイタン♡」
「はぁ?きめぇよ」
「すんません....」
あ、ガチのトーンだ。やめとこ。
「聞きてぇことがあってな」
「はい?」
「その、日本は大丈夫か?大きな災害はなかったか?たくさん人が死ぬような事件はなかったか」
あ、そういうことか。
「ふん!!!」
「ど!どうした急に!」
おれは自分の顔を思い切り殴った。自分が恥ずかしい。そりゃそうだ。豪快な彼女でも、若くしてこちらの世界に来たのだ。心配なことがあっても当然だ。弟子に今の表情を見られたくはなかったのだろう。深深と土下座して、笑顔で答える。
「え、まぁ、色々ありましたが、おおむね大丈夫っすよ。」
できるだけ彼女が安心できるよう。元気に明るく言った。
「そ、そうか。よかったぁ」
ほっと安堵したようだった。全身の力が抜けるようだった。彼女はその場でへたりこんでしまった。
「ははっわりぃな。腰抜けちまって」
「いえ、心配になるのは当然ですよ。」
彼女に手を差し伸べる。やっぱり普通の女の子だ。今までずっと気を張っていたのだろう。引き上げた体重は予想より遥かに軽かった。
「いつか、帰れるといいですね」
「あぁ!」
彼女は力強くいった。
「ところで、えろ助おまえ。神様にあったろ。あいつからどんな力をもらったんだ?」
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