第169話 年末おせち作りで仲直り大作戦③

「けーちゃんおかえりなさい」

「ただいま戻りました」

「ただいま〜」


 買い出しから戻ると美心さんがお出迎えしてくれた。

 年末の寒さから解放されて僕も陽向さんもほっと一息ついた。


「ちょっと健、あんたこんな小さい子になに「旦那様お迎えごっこ」させてるのよ」

「ごっこあそびじゃない」

「……まあまあ、留愛先輩。まだ小学生ですし」

「……ロリコン……」

「健くん! ロリコンだったの?!」

「違いますよ」

「けーちゃん、ろりこんってなに?」

「美心さんは知らなくていいんです」


 色々と誤解を生むような発言はつつしんでいただきたい。

 小学生女児がいる目の前だぞ?

 あと僕は断じてロリコンじゃない。


 天使さんがロリコン枠だとするならそうなるが、天使さんはロリじゃないだろ。

 陽向さんと違って胸も背もあるし。

 ……陽向さんはそういう意味で言うなら合法ロリか。


「さっさと作業再開するわよ。冬だし、あんまり長くはできないもの」


 留愛先輩、何気に美心さんの事を気遣ってはいるんだよな。

 陽が落ちる前には帰したいみたいだ。

 年末というこの浮かれた時期に犯罪に巻き込まれないとも限らないし。


 一応スケジュール的には明日でおせち作りは終わる予定である。

 今日の進捗状況なら問題もない。

 人海戦術はやはり強い。


「……ね、ねぇ本部くん」

「なんですか?」


 なぜか小声で近付いてきた天使さん。


「本部くんって、ロリコンなの?」

「だから違いますって」

「そ、そっか」


 それを聞いて安心したらしい天使さん。

 料理を教わっていた相手がロリコンだったらと思って警戒されていたのかもしれない……

 おのれ留愛先輩、なんて誤解を……


「本部、美心に手を出したら許さんからな?」

「出しませんって」


 腕組みして仁王立ちの見明さん。

 こ、こわいですくまお姉ちゃん……


「本部さんがロリコンだとすると、私の勝機が消えてしまうので是非とも脱ロリコンを」

だっする必要ない健全な男子高校生なのでご安心下さいね……」


 豊満な胸を寄せて必死に訴えてくる黒須さん。

 黒須さんの中のロリコン判定は胸があるかどうかなのだろうか?

 それとも素で巨乳アピールをしてしまったのだろうか?


 黒須さんはどこかズレてるからわからん。

 でも見明さんと天使さんから若干反感買ってるっぽいのでやめた方がいいと思う……


「作業止まってるわよ健」

「……はい。すみません……」


 なんで僕だけが留愛先輩に睨まれないといけないんだよ……

 ロリコン疑惑掛けられた挙句に怒られるとか理不尽過ぎませんかね?


 なんか留愛先輩までめちゃくちゃ不機嫌になってるし……


「青春だね〜」

「青春だな〜」

「陽向さん、直人さん。縁側で茶をすする老夫婦みたいな微笑みで僕らを眺めるの止めてもらっていいですかね?」

「若いのぅ直人じいさんや」

「若いのぅ陽向ばあさんや」

「……完全に老化してやがる……」


 だからお日様みたいな微笑みやめい。


「本部くん、ボクは次に何をしたらいいかな?」

「……桃原さんしか僕の味方はいないようだ」

「う、うん。味方だよ?」


 状況を飲み込めていない桃原は困ったような笑みを浮かべつつそう答えてくれた。

 これからは男の娘を愛するべきなのかもしれない。

 可愛いは正義。

 要するに可愛かったら性別は関係ない。

 これは世の中の真理である。


「くまちゃん、すまほかして」

「いいけど、なにすんの?」

「しらべる。ろりこんについて」

「それはやめろ」


 今の若い子って怖い。

 スマホで簡単に情報を調べられるなんて……

 文明の力、恐るべし……


 こうなったらロリコンという概念自体を消すしか方法がなくなってくるかもしれない。

 美心さんを穢させるわけにはいかない。


「今日はここまでにしましょ」


 なんだかんだでみんなでワイワイしながらも初日は終わった。

 結局天使さんと見明さんは会話をすることはなかったが、露骨に仲が悪いというような雰囲気ではなかった。


 お互いに気を使い合っているぎこちなさはある。

 でも、このまま自然と戻っていってくれたら良いなと思った。



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