幼馴染の元カノは今日も僕といる
はるのはるか
ぼくの編
1. 幼馴染の元カノが来た
僕の幼馴染、
昔から何でもできた海斗は小学校、中学校の時には常にクラスのみんなに囲まれていた。
みんなの話題の中心にはいつも海斗がいた。
小さい頃から海斗と一緒にいる僕は、海斗が何かすごいことをする度に誇らしく思い、憧れていた。
特にサッカーが好きだった海斗は中学校にあがり、サッカー部に入ったタイミングでさらに彼の周りに寄ってくる人は増えていった。
それと同時に僕と海斗との距離はだんだんと、明らかに遠のいていった。
会話する回数が減り、一緒に登下校する頻度が減り、そして目も合わなくなった。
それでも海斗の功績が至る所から噂として聞こえてくる時は、自分のことのように嬉しく感じたり。
ここら辺には高校が一つしかないため、海斗とは同じ高校に進学することになった。
文武両道を完璧にこなす海斗とは対象的に、全てにおいてパッとしない高校生活を送っていた夏休み明けの授業開始日。
無理やりに引きずって登校してきた僕の前を歩く二人組に目がいった。
その時に僕は初めて
肩口まで切り揃えられた綺麗な銀色の髪の毛に、どこかあざとい雰囲気を醸し出すように整えられた顔のパーツがやけに印象的だった。
夏休みに付き合い始めた学校の美男美女カップルとして、久々の校内では噂が絶えず風に乗って流れていた。
時たま見かける桜ヶ丘さんの個人的印象は冷たく無口な女子というものだった。
桜ヶ丘さんがいつもいるグループは学年トップカーストなどと言われており、一緒にいるのは学年の人気者ばかりだ。
そんな中で桜ヶ丘さんはあまり喋らず聞き手に回っているような感じだ。
それでも桜ヶ丘さんは誰とでも遜色なく接していることで、多くの人から人気を集めていた。
そんな彼女と海斗のカップルはすごくお似合いだと思った。
だからその二人が別れたという噂が耳に入ってきた時はちょっと驚いた。
────────────────────
そろそろ本格的な秋の季節がやってきたかと思われる10月上旬。
制服も夏服から冬服へと衣替えをして、冬に向けて少し早めの心構えをしたところ。
4時間目の授業が終わると、各自が仲のいい友達と机をくっつけたり椅子を持っていったりして一緒に昼休憩の時間を過ごしている。
かくいう僕は友達なんていないため、今日も教室を出て階段を下りる。
上履きのまま校舎外を出て、裏庭の方へと回りいつもの段差のところに腰を置く。
昼休みにこんな場所に来るのは僕くらいなため、いつも安心して時間を過ごすことができる。
弁当の蓋を開けて箸を持ちはじめたタイミングで駐輪場の方から足跡が聞こえてきた。
つい箸を持つ手が止まり、音のした方を凝視する。
誰か来るのではないか。
そう思ったが、自転車に忘れ物をして取りに来たという場合を軽く想像できたため、駐輪場に人が来たとて何ら不思議なことでもないのだ。
何に警戒しているんだと自分を落ち着かせ、弁当の具を箸で持ち上げようとした。
「あ、えーっと………
目の前から声がしたことで下を向いていた顔が勢いよく起き上がった。
「え………!?」
声の主は桜ヶ丘結衣だった。
中腰になり顔を近づけてくる桜ヶ丘さんの顔をまじまじと見てしまっていた自分に気が付き、咄嗟に顔を横に逸らした。
「え、どうしたの?」
逸らした僕の顔を追いかけるようにして顔を合わせてくる桜ヶ丘さんに対して必死に避ける。
「そ、その、顔が……!近い………です」
限界になり手で顔を覆った。
「あ、あああぁ。ご、ごめん」
「……………うん」
しばらく謎の空気が漂ったあと、桜ヶ丘さんの手には小さい手提げ袋があることに気がついた。
「私も、ここで一緒に食べていい?」
「え!?あ、うん……いい、ですよ」
「ふふっ、なんで敬語なの」
断れるはずもなく、桜ヶ丘さんは僕の横に腰を下ろした。
座る瞬間、彼女からは甘い匂いがふんわりと漂ってきた。
「いつもここで食べてるの?教室で誰かと食べたりはしない?」
「一緒に食べる人がそもそも居ないから。それに、一人で食べてる方が安心するよ」
教室の自席でぼっち飯を食べる方が余っ程心に刺さる。
「じゃあ、私が一緒に食べた最初の人ってことだね」
「!?」
横を振り向くと、外野からは見たことのない桜ヶ丘さんの笑顔が陽の光によって照らされていた。
一瞬ドキッと反応してしまった心臓を落ち着かせるように、お茶の入ったペットボトルを勢いよく飲み干した。
「
鼓動が落ち着いたところで桜ヶ丘さんからの急な疑問が飛んできた。
「どう……って」
「率直な気持ち。凪くんが思う私を聞かせてほしいの」
いつの間にか食べ終わった弁当箱を袋にしまい、隣から立ち上がった桜ヶ丘さんは僕の目の前に来てそう言った。
理解できない問いかけに対して何が正解なのか分からなかったが、きっとこれを言うべきなんだろうと思った。
たったの今感じた桜ヶ丘さんの見え方。
「見た目によらない元気さがある」
そんな気がした。自分でも何を言っているのかよく分かっていない。
これで彼女の満足のいく答えになったのだろうか。
「……そっか。ありがと!」
そう言い残してこの場を走り去ってしまった。
何だったのだろう。
僕の幼馴染と付き合っていた人が突然来たことで、終始気が動転していた。
「なんで名前、知られてるんだ……?」
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