6.終わりの冬〜少女Aのクリスマス〜

♪ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る♪


…いや、鳴っているのは鈴なんかじゃない。

パトカーのサイレンだ。


♪今日は楽しいクリスマス♪


…楽しい?

目の前で人が真っ赤になって死んでるのに?

それは私の大好きな…いや、大好きだった人なのに?


「通報者は君か?」


パトカーから降りてきた警察官が私と彼の亡骸の元へ駆け寄った。


「はい。」


短く答える私。


「それで…被害者を殺したのは本当に君なのか?」


彼の死を確認した警察官は振り返り、再び私に尋ねた。

私は今度は声を出さずに頷いた。


彼の血で真っ赤に染まった私の両手に手錠がかけられたが、寒さで悴んだ手は手錠をかけられても冷たくは感じなかった。

2人の警察官に連行されながらふと後ろを振り返る。

降り積もった雪の上に真っ赤になって倒れている彼はまるでクリスマスケーキの苺みたい…

そんなことをぼんやりと思う。


高校1年のクリスマス。

今年のクリスマスプレゼントは『少女A』という記号のような名前だった。

普通の人なら屈辱的な名前なんだろうけど、雪浪琉知愛にもなれず、古瀬沙依にもなりたくない私にとってその名前は最高のプレゼントだった。

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