第91話
「こちらアルファ。1名確保され、自爆したことを確認した」
「ブラボー了解」
「チャーリー了解」
「エコー了解」
「デルタ、援護に向かう」
1名の戦死を聞いた他のアルファ部隊は自分の今いる場所で魔法の行使を始める。
デルタ部隊はアルファ部隊が敵に襲われたことを知ったため、残ったアルファ部隊を本国に帰れるように援護を開始した。
他の部隊はアルファ部隊が作戦通り囮として活躍していることを知り、本当の作戦を開始した。
★
「同時に3箇所で魔力反応あり。恐らくこれは陽動ですがそれぞれ近いものが対応を」
「北側3名向かいます」
「南東2名向かいます」
「北西4名向かいます」
バーグは相手の情報が掴めないため、後手に回っている今の状況が煩わしく感じていた。
そのためバーグは先手を打つことにした。
「警備の半分は私の言う場所に向かってください。王城、王立学園、王立公園の各施設。その中でも王立学園の生徒が集まる場所には人を重点的に割いてください」
敵は何を狙っているのか。
それがまだ判明していない今、戦力を特定の場所に集めるのは得策ではないが自分が相手側ならば何を狙うのかを考えてバーグは配置を決めた。
王城は単純に国王を殺すため。
一番簡単に王国の機能を停止できる方法。
その間に戦争でも起こせば王国を簡単に潰すことができる。
次に王立学園は最新の研究などの様々な王国の最先端の技術が眠る場所。
そのためそこを攻撃すれば研究を盗み出したり、破壊したりすれば王国は痛手を追うことになる。
最後に王立公園。
そこは現在王国中から人間が集まっており、一番簡単に大勢の王国民を皆殺しにできる場所となっている。
また王国の将来を担うことになるであろう王立学園の生徒もそこに全員集まっており、その者たちを殺すだけでも王国には大きな損失を得ることになる。
バーグは自分が敵ならばこの3つのうちのどれかを狙うと考え、この配置に命じたのだった。
★
「こちらデルタ。アルファ各位のいる場所に直行する人影を発見。このままいくと30秒ほどで接敵する」
「了解。反撃体制を取ります」
デルタ部隊から敵が接近しているという情報受けたアルファ部隊は【
「敵の使用魔法が変化した」
「恐らく戦闘になります。被害は最小限に留めてください」
「「了解」」
バーグの注意を聞いた黒服たちはそれぞれの組の一人が結界魔法の準備を始める。
黒服たちが角を曲がり、敵を視界に入れたと同時に攻撃が飛んでくる。
その攻撃は一人によって相殺され、すぐさま四人ないしは五人が結界の中に入った。
「デルタより各位。アルファ部隊は敵との戦闘に入った」
「「了解」」
「ブラボー、予定地にもうすぐ現着。到着し次第作戦を開始する」
「チャーリー同じく」
「エコー既に現着。逃走経路の確保に移る」
デルタの報告を受け、各班は作戦を開始した。
★
一方その頃……。
「本当に敵が侵入しているのか……。わかった。俺も警戒を強めよう。もう行っていいぞ」
王立公園で歩いていたクリストフはよく黒服たちを見かけたのでその中のひとりに声を掛け、何があったのかを聞いた。
「これじゃあ、アリスの試合見に行けるかわからんな……」
クリストフはそんな言葉を漏らしていた。
★
「戦闘に入ります」
その言葉と同時に黒服は結界魔法を行使した。
北側戦闘は……。
「敵は氷系統を使っている」
相手の攻撃を相殺した黒服が敵の使った魔法の属性を報告する。
その報告を受けたもう一人の黒服が氷系統の弱点である炎系統魔法による攻撃を試みる。
だがその攻撃はしっかりと水系統魔法により相殺された。
「敵は多属性魔法師。どれが使えるのかを見極めるぞ」
「了解」
魔法属性。
それは魔法師にとっては非常に大切なものであり、弱点属性をつくと魔法階位に差があろうとも勝負することができるようになる。
つまり属性相性さえ良ければ
そのため魔法師たちは魔法戦闘において一番に相手の使える魔法を把握することが大切なのだ。
そして黒服たち3名がそれぞれの使える属性で攻撃をし、敵の使える属性が判明した。
「雷系統以外は全部使えるようだ」
「だがそれも怪しい。わざと使っていない可能性がある」
「ここはいっそ無系統で行くぞ」
「「了解」」
無系統魔法は魔法属性が存在しない魔法。
そのため弱点を突かれることがなく、弱点を突くことができない使い手の魔力に依存される魔法となるため、習得している者は少なく、さらに無系統魔法を使用するものは少ない。
だが無系統魔法の真価は弱点がなく、弱点を突けないということにこそ真価がある。
★
(次は何で来る……)
黒服たちの攻撃に応戦しているアルファ部隊の者は次に飛んでくる属性をしっかり見極めようとしていた。
だが次に飛んできたのは予想外のものだった。
(無系統!?)
どの属性でも良い無系統が飛んできたため、一番得意な炎系統で応戦をする。
その後すぐに遮蔽から攻撃を仕掛けてきていた黒服たち二人が出てくる。
(強化魔法。近接戦か…)
すぐには近寄らせないために様々な属性の魔法で攻撃を仕掛けながら腰に隠してした二本の短剣を取り出す。
そして近づいてきた一人の頭に突き刺す。
だがそれは障壁により防がれる。
(優秀な後衛。厄介だな)
的確なタイミングで出された障壁。
攻めてきた本人は完全に後衛を信頼し、自分での防御態勢を取っていないため、その攻撃は非常に激しいものだ。
そしてそれが二人。
いくら帝国の誇る工作部隊の隊員でもその攻撃を防ぐのは厳しい。
少しづつ時間が経つにつれ、段々とアルファの身体には傷が目立ち始めていた。
このままでは負けると感じたアルファは最終手段に出る。
それは自爆だった。
★
「下がれお前ら!!」
敵の体内から異常な魔力反応を感じだった後衛が叫んだ。
それとほぼ同時のタイミングで前衛二人も後ろへ下がる。
だが後ろに下がりきる前にそれは発動した。
前衛二人は自爆をモロに喰らい、後衛は前衛二人を守るために障壁を張ったため、それにより魔力回路のオーバーヒートを起こす。
そして魔力回路がオーバーヒートを起こしたため、結界魔法も途切れた。
北側の対応をしていた三人はたった一人の道連れにより、一瞬にして戦闘能力を奪われた。
その後待機していたデルタにより、戦闘能力を奪われた黒服三名は殺された。
★
南東戦闘は……。
南東は二人という少人数だが、前衛を担う男は黒服たちの中でもトップクラスの戦闘能力を誇るもの。
その実力はバーグのお墨付きだ。
そのため敵の攻撃を正面から全て潰し、自爆という最終手段を使う隙すら与えず敵を制圧。
そして死んだあとの自爆も使わせる前に魔力の核を破壊し、無事に脳のある敵の確保に成功した。
★
北西戦闘は……。
特に危険な場面もなく、安定した戦闘を繰り広げていた。
ただそのため、北側と同じ展開になってしまう。
だが少しだけ違う点がある。
後衛が二人いたため戦闘中は二人とも障壁を張っていたが、自爆された際は一人でも動ける者を残すために一人で二人のことを守った。
そのため三人は動けなくなったが一人は残った。
そして結界魔法が解けたタイミングで有利な状況と見たデルタ部隊が介入してきた。
「北西に敵の増援が来た。敵の自爆により動けるのは私だけです。援軍を」
「私が向かいます。南東組はそのまま敵の回収を。北側にも援軍を向かわせてください」
北西からの連絡を受け、連絡を受けていない北側は手遅れだろうと感じているが無視することはできない。
そのためまだ間に合う北西には自分が向かい、北側は黒服たちに任せることにした。
(バーグ様が来るなら逃げられないように時間を稼ぐか)
バーグからの連絡を受けた黒服は敵に逃げられないように時間を稼ぐことにした。
その方法は自分をもう少しで殺せると相手に思わせることだ。
先の戦闘で疲労したような素振りを見せつつ、敵の攻撃を完全には防がずわざと少しのダメージを負う。
そうすれば相手はあと少しで殺せると感じ、自分に集中せざるを得なくなる。
★
残った一人を殺し、その後転がっている者を殺すつもりのデルタは最後の一人を殺すために様々な魔法を繰り広げている。
その甲斐あって相手の身体の傷が少しずつ目立ち始めていた。
(あと少しなのだが……。何か違和感がする)
長年の経験から何か違和感を感じているデルタだったが、その正体がわからない。
そのため攻撃を続けていた。
そしてその違和感の正体がわかった。
(拘束魔法!こいつまだ力を残していたのか)
デルタに感じていた違和感は敵のダメージをくらっているのに何処か余裕そうな雰囲気だったのだ。
すぐに倒せないとわかったデルタはその場を離脱しようとするが拘束魔法により足が動かないため、離脱できない。
そして拘束魔法からあと少しで脱出できそうなときにそれは来た。
圧倒的な力を持つ人間が。
★
「間に合いましたか」
バーグが現場についた時、敵は足を拘束され動くことができなかった。
黒服たちは三人がその場に倒れているが息はあり、最後の一人は敵と戦闘をしていた。
「ここは任せてください」
そう言うと残った一人はすぐに倒れている三人を回収し、その場を離れた。
「さて。うちの部下と遊んでくれたみたいじゃないですか」
バーグは雑談をしながら敵を殺すために剣を振るう。
その攻撃を間一髪で逃れたデルタはここで死ぬことを覚悟する。
デルタの手から魔法の兆候を感じたバーグはすぐその腕を斬り落とす。
(クソっ!最後に一矢報いてやる!!)
デルタは自爆魔法を開始し、せめてこの辺りとバーグにダメージを与えようとする。
だがそれは叶うことはない。
発動する前にバーグは魔法式を凍結させ、首を斬り落としたためだ。
「最期まで敵を倒そうとする姿勢は素晴らしいな」
デルタの身体を細切れに刻み、燃やして死体を消したバーグは斬り落とした首を拠点に持ち帰っていった。
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