執行官の皇子様

@Chaden

プロローグ

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 アルゼノン王国。


 そこは多くの民が住んでおり、大陸有数の商業国である。


 多くの商人が夢を追いかけてやってくる平和な国であり、多くの冒険者たちが在住している国だ。


 だがその裏には悪いものも多数おり、それらを排除する執行官と自称する者たちが存在する。


 王国のある路地に、朝っぱらから大きないびきを鳴らしながら寝ている男がいた。


「おい、兄ちゃん」


 その男のことを三人の男が囲みながら声をかけていた。


「そこの兄ちゃん!」


 一人の男が寝ている男の顔を蹴り飛ばす。


 壁を背もたれにしながら寝ていた男は地面に倒れてやっと起きた。


 猫のように体を伸ばしながら高い声を出し、その後、首や体をひねり、ゴリゴリと音を鳴らしていた。


「おい兄ちゃん。ここがどこか知ってんのか?」


 三人組が声をかける。


「んっ。どちら様?」


 寝ぼけているのかまともな会話にならない。


「ここがどこか知ってんのかって聞いてんだよ!」


「確か・・・薬を売っているところ。あってるか?」


 それを聞き「何だ、客か・・・」と一人が呟いた。


「ブツはあるのか?」


「ブツね・・・」


 寝ていた男の口調が突然変わる。


「それはお前らだ!」


 それを聞いた瞬間、三人組は三手に別れ、各々の得意魔法を展開し、逃げ出そうとした。


 その判断は一瞬。並の相手なら全員逃げることができただろう。


 だが今回は相手が悪かった。


 逃げ出す前に三人とも手足を拘束され、壁に貼り付けられたため逃げ出すことはできなかった。


「流石、騎士団から逃げ続けているグループ。素晴らしい反応だ。あともう少し早かったら逃げられていたな」


「なんなんだ!お前は!」


「俺は執行官。お前なみたいな街の治安を悪化させる病巣を原因を壊す者だな」


 それを聞いた一人の男が暴れ始める。


「あ〜、そんな暴れないで。聞きたいことあるし、更生するなら別に危害は加えないから。ないなら試したいことがあるから、その実験材料にでもしようかな」


「執行官。聞きたいこととは何なんだ?」


 別の男、おそらくリーダーらしき人物がサルドに声をかける。


「いいね、君みたいに状況の判断が早いやつはいいことだ。用件は簡単なこと。君たちのことを雇っているアジトを知りたいんだけど・・・。場所って知ってる?」


「俺はわかります。一度、幹部のそばにいたことがあるので」


「なら話が早い。案内はいらないから場所を教えて」


「その前にこの拘束を外してもらえないでしょうか。言ってから殺されてはたまらないので」


 サルドは腕を組みながら少し迷う。


「いいよ。とりあえず、全員の拘束を解くけど俺に攻撃を仕掛けてきたやつは容赦なく殺す」


「わかりました」


 サルドは三人の拘束を解く。


 そしてそのうちの一人が愚かなことにサルドに向かってナイフを投げる。


 そしてその後、逃げ始める。


 そのナイフはサルドに手で掴まれ、そのまま投げ返した。


 男はすでに目視できる範囲にはいないのにそのナイフは迷わず突き進み、暗闇に消えたあと、遠くから男の悲鳴が聞こえる。


 リーダーはそれを聞き、驚いていた。


 まさか命中するとは思っていなかったのだろう。


「あいつ、君の監視か何かしてる人でしょ。君が側近を首になったのは組織の裏切り行為か何かで、また裏切らないか監視していた人かな」


「はい。そのとおりです」


「そう。それじゃ、質問に答えて」


 サルドは何もなかったように質問する。


「私達のアジトは───」


 リーダーの男が説明をする。


 リーダーと幹部たちの特徴、そして構成員、予備基地の場所、知っている限りの情報を教えてくれた。


「よし。ありがとね。もう悪いことはしちゃだめだよ。次悪いことしてるの見たら、容赦なく殺すよ」


 そう言い残し、サルドはその場を去っていった。


 そしてそこに残った二人はもう悪いことをするのはやめようと思った。


 そしてこの日、また一つ、王国に住まう病巣がなくなった。

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