執行官の皇子様 ─最強の皇子は王国で暗躍する─

茶伝

第一章 入学編

プロローグ 執行官

 アルゼノン王国。


 そこは多くの民が住んでおり、大陸有数の商業国家である。


 多くの商人が夢を追いかけてやってくる平和な国であり、多くの冒険者たちが在住している国だ。


 だがやってくる者たちの中には王国としては望ましくない存在もいる。


 そして王国にはそういった者たちを陰ながら処理しているため執行側という者たちが存在しており、その存在は国王すら気づいていない。


 ★


 ある日、王国の路地に朝っぱらから大きないびきを鳴らしながら寝ている男がいた。


「おい、兄ちゃん」


 その男のことを三人の男が囲みながら声をかけていた。


「そこの兄ちゃん!」


 一人の男が寝ている男の顔を蹴り飛ばす。


 壁を背もたれにしながら寝ていた男は地面に倒れてやっと起きた。


 猫のように体を伸ばしながら高い声を出し、その後、首や体をひねり、ゴリゴリと音を鳴らしていた。


「おい兄ちゃん。ここがどこか知ってんのか?」


 三人組が声をかける。


「んっ。どちら様?」


 寝ぼけているのかまともな会話にならない。


「ここがどこか知ってんのかって聞いてんだよ!」


「確か・・・薬を売っているところ。あってる?」


 それを聞き「何だ、客か・・・」と一人が呟いた。


「ブツはあるのか?」


「ブツね・・・」


 寝ていた男の口調が突然変わる。


「確定だし取り敢えず殺すか」


 それを聞いた瞬間、三人組は三手に別れ、各々の得意魔法を展開し、逃げ出そうとした。


 その判断は一瞬。並の相手なら全員逃げることができただろう。


 だが今回は相手が悪かった。


 逃げ出す前に三人とも手足を拘束され、壁に貼り付けられたため逃げ出すことはできなかった。


「流石、騎士団から毎度逃げ続けているグループ。素晴らしい反応だな。あともう少し早かったら逃げられていたかもな」


「なんなんだ!お前は!」


「執行官だ。もしかしたらお前たちのようなならず者なら噂程度で聞いたことがあるが、一応説明するとお前なみたいな街の治安を悪化させる病巣を壊す者だな」


 それを聞いた一人の男が暴れ始める。


「あ〜、そんな暴れるな。聞きたいことあるし、更生するなら別に危害は加えないから。ないなら試したいことがあるから、その実験材料にでもしようかな」


「執行官。聞きたいこととは何なんだ?」


 別の男、おそらくリーダーらしき人物がサルドに声をかける。


「いいね、君みたいに状況の判断が早いことはいいことだ。用件は簡単なこと。君たちのことを雇っているアジトを知りたいんだけど・・・。場所って知ってる?」


「俺はわかります。一度、幹部のそばにいたことがあるので」


「なら話が早い。案内はいらないから場所を教えて」


「その前にこの拘束を外してもらえないでしょうか。言ってから殺されてはたまらないので」


 執行官は腕を組みながら少し迷う。


「わかった。とりあえず、全員の拘束を解くけど俺に攻撃を仕掛けてきたやつは容赦なく殺す」


「わかりました」


 執行官は三人の拘束を解く。


 そしてそのうちの一人が愚かなことに執行官の顔に向けてナイフを投げる。


 そしてその後、逃げ始める。


 執行官は投げられたそのナイフを顔スレスレで止めており、そのナイフを男が逃げた方角へ投げた。


 男はすでに目視できる範囲にはいないのにそのナイフは迷わず突き進み、暗闇に消えたあと、遠くから男の悲鳴が聞こえる。


 リーダーはそれを聞き、驚いていた。


 まさか命中するとは思っていなかったのだろう。


「あいつ、君の監視か何かしてる人だろう。君が側近を首になったのは組織の裏切り行為か何かで、また裏切らないか監視していた人といったところか」


「…そこまでわかるのですか」


 男は執行官のその鋭い考察に驚いていた。


「それじゃ、質問に答えて」


 サルドは何もなかったように質問する。


「私達のアジトは───」


 リーダーの男が説明をする。


 リーダーと幹部たちの特徴、そして構成員、予備基地の場所、知っている限りの情報を教えてくれた。


「よし。ありがとね。もう悪いことはするなよ。次悪いことしてるの見たら、容赦なく殺すからな」


 そう言い残し、執行官はその場を去っていく。


 残った二人はもう悪いことをするのはやめようと思った。


 そしてこの日、また一つ、王国に住まう病巣がなくなった。

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