#4 part1

「お久しぶりです視聴者の皆さん! お元気にしていましたでしょうか! 少々大げさに聞こえるかもしれませんが、『男子三日会わざれば刮目して見よ』という言葉もある事ですし、一週間という期間は何か変化が起こるには十分すぎます。僕は僕で頑張りましたよこの一週間。一つ聞いてもらいたいんですよ本当に。ここまで9試合を消化したわけですが、僕が登板したのは5試合です。えーこのままのペースで登板が続きますとなんと80試合に登板することになるわけです。ハハッ、アンタッチャブルレコードは超えてないとはいえ60試合登板が結構な負担である事を考えると普通に過労死ラインですね。というか流石に80登板はきついですって、頑張ってくださいよ打撃陣。これで僕が怪我なんてしてこの番組打ち切りになったらどうしてくれるんですかって話ですよ。まぁ流石に最終的には60試合程度までには留まるでしょうけど……それでも先行きは不安ですね。今日は今シーズン初めての広島レッズ戦です。それはそうと、そろそろ本題に戻って今回のゲストを紹介しましょうか。今回はですね、まぁ予告はしていたんですけどブルペン放送局としては初! 外国人ゲストでございます! それでは登場していただきましょう! アメリカからやってきた黒船セットアッパー、KKケーケーことカービィ・カイル投手とその通訳にして代理人・ホークさんです!」


 


 


 


 スタッフと黒鵜座の拍手に包まれながら、手を振りながらKK達が入場してくる。KKは体格に恵まれているプロスポーツ選手の中でも群を抜いて背が高く、かなり筋肉質だ。加えて右耳にはピアスをして肩までの長さの金髪を一本にまとめていることから初対面の人からすれば威圧感を覚える見た目である。顔は外国人っぽく面長で、青くて細長い瞳、そして口元にも顎にもひげは生やしていない。以前黒鵜座が何故ひげを生やしていないのかを聞いてみたところ、妻に「清潔感がない」と言われ剃られたらしい。ユニフォームの上からだと見えないが、肩にタトゥーもしている。これが文化の違いという奴か。


 


 


 


「二ホンのミナサンこんにちは! ドウモ、黒鵜座というバカがお世話になってマス!」


 


 


 


「おいちょっと待てKK、最後のは誰かからの差し金だコラ」


 


 


 


「ダレって、エンヤが最初にこれを話せと言ってたケド?」


 


 


 


「やっぱり熱田か。あの野郎めェ……KKが純粋だからって変な事吹き込みやがって。後でとっちめてやる」


 


 


 


 頭に青筋を立てる黒鵜座の横でKKは首をかしげる。どうやら自分の言ったことの意味もよく分かっていないらしい。まぁだから通訳がいるわけなんだけど。


 


 


 


「まぁいいでしょう、とりあえずKK。今ブルペン放送局に出てるわけだけどどんな気分? ってホークさん伝えてもらえる?」


 


 


 


「OKネ! ~~~」


 


 


 


「~~~」


 


 


 


 二人が英語で会話している。黒鵜座は高卒であるために、その英語力もたかが知れたものである。よって彼は会話についていくことが出来ない。と、話が終わったらしい。


 


 


 


「日本のテレビ、クレイジーね! 自由の国アメリカでも普通こんな事しないヨ! でもトテモ興奮してるヨ! やっぱり新しいコトをするのは楽しみネ!」


 


 


 


「クレイジーの所だけ聞こえました。ありがとうございますホークさん。まぁそうですよね、いつかやりたいと自分では思ってましたけどそうそう許可してくれる所もないですから。それでもKKが割と乗り気で良かったですね。じゃあハガキを取ってください」


 


 


 


「~~~」


 


 


 


「OK、OK」


 


 


 


 ホークの通訳に首を縦に振ったKKがいつもの箱の中に手を入れる。よく分からない鼻歌を唄いながら中身を混ぜていく。そしてようやく一枚、ハガキを取り出した。


 


 


 


「Here you are」


 


 


 


「サンキュー。えーペンネーム『青鳥すこすこ侍』さんから。『黒鵜座さん、KKさん、こんにちは』、はいどうもこんにちはー! 『KKさんに質問です。日本に来てから好きになった日本食を教えてください』だそうです、じゃあホークさんお願いします」


 


 


 


「~~~」


 


 


 


「Yes,yeah.~~~」


 


 


 


「~~~」


 


 


 


「~~~」


 


 


 


「色々あるけど、やっぱり一番はラーメンダネ! あの味は一回食べちゃったらクセになっちゃうヨ!」


 


 


 


「あ~、熱く語ってくれている所申し訳ないけど、ラーメンって日本食じゃなくて中華料理じゃ……」


 


 


 


「黒鵜座さん黒鵜座さん。実はラーメンって発祥は日本らしいですよ」


 


 


 


「えっマジ?」


 


 


 


 その場にいたスタッフの一人の声によって訂正がされる。話によるとラーメンは確かに中華麺を使ってはいるものの、最初に作られたのは日本であるとか。何でも中国の料理人を雇って日本で一般向けに作られた中華料理の一つがラーメンであるらしい。何だかややこしいな。


 


 


 


「何か一つどうでもいい豆知識を学んだ気がしますね。あ、でもラーメンって色んな種類? というかスープがありますよね。醤油とか塩とか。そこんところどうなんですか?」


 


 


 


「~~~」


 


 


 


「~~~」


 


 


 


「やっぱりワタシのテイバンはトンコツだね!」


 


 


 


「あ~豚骨ラーメンか。臭いはちょっとキツイけど確かに美味しいよね」


 


 


 


「ソレにたっぷりのモヤシと肉厚のチャーシュー! ホークをよく連れていくけど、ヤミツキになるネ! ……実はワタシも結構食べマス」


 


 


 


「……んん?」


 


 


 


「アノ山盛りのラーメンにドロドロに溶けたスープ! あれを最後まで飲み干すのが礼儀って聞いたことあるヨ!」


 


 


 


「あー、もしかして三郎系ラーメンの事なのかな?」


 


 


 


 三郎系ラーメン。よく知らない人のために説明すると、一般的に麺が見えないほど具を盛りに盛ったラーメンの事である。ラーメンの一大有名チェーン店の名前からとってそのように呼ばれるようになった。黒鵜座も一度だけ食べた事はあるが、あまりの具の多さとその量から非常に苦戦した覚えがある。いや食べるのに苦戦ってなんだよ。人によって違いはあるだろうが黒鵜座としてはもう二度と行きたくないと思えるレベルだった。


 


 


 


「Yes,yes,yes!」


 


 


 


「その頷きようから見るにそうらしいですね。というかプロ野球選手があんないかにも不健康の塊です! って感じのものを食べるのはどうなの……?」


 


 


 


「~~~」


 


 


 


「~~~」


 


 


 


「Ah~、大丈夫だヨ! アメリカにいる時もしょっちゅうハンバーガー食べてたし! 運動してカロリーを消費すれば問題ナシ!」


 


 


 


「まぁ間違ってはないし、体を大きくする方法として間違ってはないのかもしれないけど。何か腑に落ちない……。えー話がとりあえず一区切りついたところでCMの時間です、この続きも皆さんお楽しみに!」

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