#3 part2
「……燃えたな」
「よく燃えたねぇ」
試合は一回の裏。ブルーバーズはいきなり4点を追いかける展開となっていた。というのも先発の
「最初に言い出したのお前だからな。お前のせいだぞ」
「いやいや、こればっかりは実力でしょうよ。まぁ確かに僕が不穏な事を言い出したのは事実だけど、結局は弱肉強食の世界だから。実力が無いなら打たれるのは当然の話だし」
「何か心なしか嬉しそうだな」
「あ、バレた? いやだって僕昨日も一昨日も投げてるから。開幕からいきなり三連投はちょっと嫌だなって思ってたし」
「ケッ、そーいう自分の事優先でチームの事が二の次な所が気に食わねぇ」
「まさかお前からフォアザチームみたいな言葉が出るとは思わなかったよ。何か変なものでも食ったか?」
「うるっせぇバーカ!」
「……あ、もうCM明けてる? えー、立ち上がりからいきなり不穏なのは今回の僕らの放送と同じですね。ってなわけでやっていきましょうブルペン放送局。不本意ですが、本当に不本意ですがゲストの方にもお便りを選んでもらうのが決まりなので。おら選べ熱田」
「あぁ? お前に言われるまでもなく取ってやるわ!」
スタッフが毎度のごとく白い箱を持ってくる。それを熱田が受け取って乱雑に中身を取り出す。お前そういう風に物を大事にしないから大成しないんじゃねーの、なんて言う黒鵜座の声を無視しながら。
「オラァ! これでいいな黒鵜座!」
「いや読めよ」
「注文の多い野郎だな!」
「まだ前菜すら注文してねーレベルだわ」
「はいはい、読みますよ。読めばいいんだろ」
「すねた子供かよ」
「ペンネーム『薩摩な指名打者』から。……薩摩ってどこだっ、たっけ?」
「お前流石にそれはないだろ。鹿児島だよ鹿児島。中学生時代に社会の授業でやっただろ、何なら高校でも日本史で勉強しただろ」
「残念だったな黒鵜座! 俺は高校では世界史を取ってた!」
ま、眩しい! 馬鹿すぎて直視できないほど眩しい。聞いているのはそこじゃないんだよ、と黒鵜座はツッコむ。
「知らねーよ……。というか自分の知識不足を鼻高々に話してんじゃねーよ」
「まぁいい。要するに鹿児島からのハガキという事だな! 結構字が綺麗じゃねーの。なになに、『桜の咲きつつある今日この頃、前回は』……えー」
熱田が言葉に詰まったのを見計らって黒鵜座が後ろに回り込む。なるほど、漢字が読めないのか。仕方がないので補助をしてやる。
「
「『斯くの如き素晴らしき放送悉く申し上げ……』」
「
「『候。小生これを聴きて一念……』」
「
『
「んふふ……お前下ネタに敏感すぎでしょ。
「何だとこの野郎!」
いよいよ下ネタに走り出した。会話の内容だけ聞けば中学生のそれと思うかもしれないが、二人とも割ともういい大人である。
「いーから次読め次」
「先に仕掛けたのお前だろうが! というか言われなくても分かっとるわ! 『一念発起しリリーフを始める事を決心致し候。ついては現役リリーフの方々に質問致したき事』……えー、読めないので飛ばします」
「大事なところかもしれねーだろすっ飛ばすな!」
「いいんだよ大事なのはその次だから。三つあるな、まず一つ。『リリーフの心構え』。……リリーフの心構えだと? そんなもの知るか! 投げる時は常に全力投球を心がけていれば大抵の打者などねじ伏せられる! というかリリーフだと? 先発をやれ先発を!」
「先発もリリーフもどっちつかずのお前が言うな」
「俺のハートは常に先発を求めている! つまりこういうものはプロ入りしてからずっとリリーフしている黒鵜座! お前の出番というわけだ!」
「人に押しつけやがったよ、もう。でもまぁコイツの言う事にも一理あるには一理あるんですよね。プロ入りしてからならともかく、今の内から自分の選択肢を潰してしまうのは勿体ないと思いますよ。やっぱりアマチュア野球で比重が大きいのはやはり先発です。その負担は確かに大きなもので、高校野球であれば150球近く投げさせられる事もありますけどそれはやはり投手が信用されている証なんでしょうね。僕も高校時代は先発やっていましたし。というわけで勧めるなら先発ですね」
「ふんっ、俺の言う事も的を得ていただろ?」
「まぁ前置きはそこら辺にしておきましょう。それでもリリーフをやりたい人とかもいるという事でしょうし、まぁそういう人のためにも教えてあげるのは悪い事でもないですからね。で、本題なんでしたっけ……そうそうリリーフの心構えですね。あー、これは先発にも同じことが言えるんですけどとにかく攻撃的でいることですかね、コイツみたいに」
「いい事言ってくれるじゃねぇか。そうだ、攻めの気持ちだ!」
「大事なのはとにかく自分を押し付ける事。『誰にもピッチングに文句など言わせない、これが自分だ!』という気持ちが大事です。弱気になってしまうとどうしても受け身になってしまいがちなので、そうなってしまうと球を置きに行ってしまって結果打者の方が優勢になってしまうわけですね。そうならないようにピッチングはどんな相手でも自分がコイツを倒すんだ! ってくらいの気持ちで向かっていった方がいいですね」
「そうそう、投手ってのは強気で行くもんだ!」
「後大事なのはは打たれてしまった時の切り替えでしょうか。反省するところがあるなら反省すればいいし、相手を褒めるしかないようなバッティングをされたら素直に相手を認める。これで問題ないと思います。それでも必要なのが本塁打以外では点が入らないわけです。つまりはどれだけランナーを背負ったとしても点さえ入らなければいいので、気楽に行きましょう。それでリリーフとして必要なもの、当たり前ですけどいつでも投げられるように準備しておくこと、ですね」
「こんな企画考えたお前が言う事なのか?」
「うるせーわ。……準備は何より大事です。事前に構えておくことで余裕が生まれます。僕もちゃんと準備してますけどやっぱり安心感が違いますね。答えになっていないかもしれませんがこれで大丈夫でしょうか? ちゃんと伝わっていればいいんですけど……ここでCMです。そんじゃ続きはまたこの後に読むということで」
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