忍冬~スイカズラ~

綾女

第1話 求めるもの

「別れよう」


大学3年の秋、僕は振られた

それまでケンカしても仲直りしていたし、仲良くやってきたつもりだ

それでも僕は別れを告げられた


就活も始まるし、現実を見ろということなのか


(とは言っても、簡単に納得できないって…)


理由も聞けなかった

それよりも、メールで言われたことが引っかかる

今まで大切な話はもちろん、会えなくても電話で伝えあってきた


(こんな大事なことをメールで終わらせて、連絡しても返事はないし)


そして何よりも引っかかることがある


(学校にもあれから来てないんだよなぁ…)


幼稚園から一緒だったけど、話すようになったのは高校の頃からだ

同じ中学から行ったのが僕たち2人だけで、それがきっかけで話すようになった

お互い頭が良いわけじゃなかったけど、進学するつもりだったから一緒に勉強した

そして同じ大学に合格し、入学前に告白したんだ


(僕が子どもなのかもしれないけど、やっぱ納得できない)


そして冬を迎えて、年が明けても会うことはなかった


――――


「あと1年で学生生活も終わるんだなぁ。

就活がスムーズに行けばもう少しのんびり過ごせるのにな」


「就活はしっかりやった方が良いと思うよ?

就職してから後悔したって遅いんだから」


「その時は転職すっかなw」


気楽に大学生活を楽しんでいる友だちと、大したことない会話をしていた

そこに彼女の親友が姿を見せた


「少し時間ある?」


僕とは仲良くなかったはずなのに、急な声掛けに少し戸惑った


「あるけど…どうかしたの?」


「あの子の事よ」


間違いなく彼女の話だ

未だ納得できていない僕には、断る理由がなかったんだ



「去年からずっと学校に来てない。

何か聞いてないの?」


「秋頃にメールで別れようって言われたんだ。

それから連絡しても返事がない。

君なら何か知ってると思ってた。」


「私もずっと連絡してるし、家にも行った。

けどお母さんに、出かけてるとか会いたくないらしくてって追い返された。」


「僕を嫌いになったのは本当かもしれないけど、今でも納得できないんだ。

僕は彼女と話がしたい。」


「私もそう。急にこんなのおかしいよ。

もう一度家に行ってみる。

明日また話そう。」


連絡先を交換して僕らは別れた

そして次の日、彼女からの連絡はなかった


――――


(何かわかるかと思ったけど、結局あれから顔を見ることもないな)


彼女の友だちから何か分かるかと思ったけど、結局進展はないままだった

そして春が過ぎ、季節は夏の日差しへと移っていく

いつも通り学校に向かっていると、電話が鳴った


僕はその日学校を休んだ

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