今日も何かを探して
東
日曜日
日曜の朝から予定なんてあるわけもなく、天気も良いので朝から散歩に出た。散歩のお供は音楽。たまにラジオも聴く。音楽はこの人しか聴かないというのはなく、色々な人の歌、色々な年代の歌、色々なジャンルの歌を聞く。いいなと思った曲をダウンロードして聴いているのだ。
散歩は、その時の気分で歩きたい道を歩く。目的地を設定し、そこで折り返す時もあれば、特に目的地を立てずにぐるっと回って戻ってくる時もある。この日はぐるっと適当に歩いた。
帰宅してからは、大学の授業で出されていた課題を終わらせた。
11時過ぎ、少し早めのお昼ご飯。朝ご飯を7時過ぎに食べているし、散歩や課題をしたからお腹はぺこぺこだ。
ご飯を食べ終え、歯を磨き、バイトに向かうべく家を出た。
「The Cafe」と書いてある看板がみえてきた。僕のバイト先だ。よくもこんなに自信ありげな店名にしたものだ。しかもこの名前の店が、全国展開しているのは驚きである。僕はこの店を「ザカフェ」と読んでいる。ザとカフェの間を開けず、ザカフェ。こっちの方がダサいため、皮肉を込めてそう呼んでいるのだ。
事務所に入ると、
入間さんがイケメンの吉先輩と話しているのを見ても、僕は嫉妬しない。吉先輩は、このカフェで一緒にバイトをしている幼馴染の
「おはようございます」
二人に、というより、事務所に向かって挨拶をして、タイムカードを押すため事務所に入った。
「お、
「おはようございます」
「
二人は話を中断して挨拶を返してくれた。もしかしたら話の腰を折ってしまったかもしれないが、あまり気にしないでおく。奥からはパソコン作業中の副店長も挨拶をしてくれた。
僕はタイムカードを押してすぐに更衣室に向かった。着替え終わり、一足先にフロアに出た。同じタイミングで薫先輩も入ってきた。
「芳沢くんおはよー」
僕も「おはようございます」と軽く挨拶を返した。少しして、入間さんと吉先輩が入ってきた。ここからは早番の人たちから引き継いで、僕たち中番が回す事になる。日曜日で客足が伸びるとはいえ、食事メニューは既にできているケーキやクッキー、サンドイッチなどを出すだけなため、4人で回すのはさほど大変ではない。どうしてもの場合は、副店長を引っ張り出すだけである。
今まで日曜日の中番は、僕と先輩二人に加えて、副店長の4人で回していた。僕も先輩二人も慣れているため、余裕があれば副店長は休憩や別仕事をする事もあった。ただ最近になって店長が体を壊して入院。そのしわ寄せが全て副店長に来て、副店長がフロアに出る余裕がなくなったのだ。結局副店長が埋めていたシフトの穴を埋めるため、新しい人を雇ったのである。このカフェは人間関係を含めた労働環境が良く、従業員の定着率が高いため、人の入れ替わりが中々ないのだ。ただ、大学卒業などで辞める人はいるため、3月、4月は新人さんが数名入ってくる時期ではある。
バイトの忙しさは波があり、落ち着いた時は洗い物などの作業をしながら、よくひそひそと話をしている。たいていは吉先輩が話し始め、薫先輩が話し相手になるという構図である。その中でたまに僕に話が降ってくる。
「入間さんは今年から大学生ってこと?」
「そうなんです」
「何学部?」
「国際学部です」
「へえ~、どんなこと学ぶの?」
といった感じで、吉先輩が入間さんを質問攻めにしていた。僕も気になっていたことを訊いていたため、耳を立てていた。おそらく薫先輩も同じだろう。盗み聞きをしているつもりはない、ということは言っておきたい。
しばらく各自黙々と作業する時間が続いた。時々入間さんに業務を教えたりすることはあったが、注文を受けたり洗い物したり、コーヒーを作ったり、机を吹いたりごみ袋を変えたり。やることは探せばいくらでもあるが、慣れればどんどん進められる。ある程度客足も落ち着き、やることも片づけ、勝手にほっと一息付いていた時、吉先輩が「そうだ」と何か思いついたように話し始めた。
「近いうちに4人でご飯行こうよ、入間さんの歓迎会兼ねて。」
「いきたいです!」
二人はこの勤務で相当距離が近くなったようで、入間さんもかなりノリノリの様子だった。
「二人はどう?」
「私も行きたい」
「いいですね」
と、見事満票を獲得し、4人で食事に行くことが決まった。
この日のバイトが終わってから、4人で連絡先を交換し、グループのチャットを作った。その日の夜に日程を調整して、次の木曜日に開催することになった。
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