第1章77 オペレーションH
「ファイナルゲーム、各20チームが最後の降下を始めます。おぉっと!? H4Y4T0達の背後にぴったりと泥C率いる”Crescent”が張り付いています。初動被せです」
「やっぱり来ましたねぇ。優勝したいならこれしかないです。あっ、”魔王と忠実な下僕”もG1Nさんの”世界の〇〇”に被せられてます!」
「競技シーンのプレイヤー同士による潰し合いです!」
「初動から目が離せませんよ」
「後降りする方が不利ですが、倒せれば一気にトップの脱落とキルポ3が手に入ります。果たして結果はどうなるのか」
「”おひるね日和”は隣接する建物にそれぞれ入りました。迷いのないこの感じ。多分事前に被せられた場合の想定もしてたんでしょうね」
「さすがH4Y4T0、抜かりはないですね。さて、楠 日和のところに降り立ったのは…同じくぶいあどの柊 美月! 同門対決の実現です」
「意地のぶつかり合いですねぇ」
「楠は武器が拾えていませんが、対して柊は、環境ショットガンの烈火を手に入れました」
「うわ~、これはさすがにきついですねぇ」
「一気に踏み込んで、遭遇です。楠は手にする武器がありません。これは為す術なしか…うえぇえぇ!?」
「いやヤベーって。タップストレイフの曲がりエグ過ぎ!」
「しかもそのままスティッキーを張り付けてすぐさま殴って距離を離しました」
「勝負ありです。いや、もうこれフィジカルだけならパンデモ余裕ですこの人。あれが瞬時に出るってもう習慣づいてなきゃ無理ですからね」
「すでに楠は隣のH4Y4T0の加勢に向かっています、が、H4Y4T0もハレルヤをノックダウン。残るは泥Cだけとなりました」
「片方は決まりですね。残るはAceの方ですか」
「視点を切り替えましょう…」
「美月倒した、H4Y4T0の方行くね!」
「いや、俺も倒した。Setoの加勢に行こう」
「うん!」
「まぁ任せろって。俺だけ助けられちゃクソだせーだろっと」
全員がそれぞれの相手を倒して初動ファイトは無事勝利。対策しといて本当によかった。ガチで心臓に悪いわ。
「ひよりが一番乗りだったな」
「うん、リダイレクトで弾避けてスティッキー刺した」
「えっぐ」
「っはは、いいねぇ。すっかり化け物の仲間入りしちゃって」
さすがに緊張しただろう。安堵でみんな饒舌だ。ただまだ試合は始まったばかり。見れば、キルログにG1Nさんの部隊が丁度壊滅したみたいだ。倒したところは、
「魔王のところにも被せがいったみたいだね」
「だろぉな。勝ちたいなら被せるしかねぇだろ。さすがはRagnarokのプレイヤーだよな。勝負師だわ」
「うん、ほんと凄い」
「よし、切り替えよう。被せてこなかっただけで俺らを狙うとこがいつ来てもおかしくない」
「だな、すぐ漁ろう」
「行ってくる!」
俺たちは初動ファイトの遅れを取り戻すべく大急ぎで物資を補給する。やがて第1収縮の安地が表示された。最後の円は、
「真ん中か」
最後の最後は俺らのいる辺りが安地の中央付近に位置している。今回は全方向に均等に散らばったなぁ。偏ることが結構多いからある意味珍しい。
今回は移動する必要がほとんどない。何もしなくても勝手に俺らの方に寄ってくるからね。
「あれ、やるのか?」
「うん、やろう」
大会の最終盤、キルを狙って気が急いた敵の焦りを突く一手。
「オペレーションHを発動する。配置につけ」
「「イエッサー!!」」
「さぁ、ファイナルゲームの安地は中央に寄りました。レインさん、最後にふさわしい安地ですね」
「そうですね。全チームが真ん中目指して突き進んできます。どこでも激突が起こるでしょうし、今回も減りは速そうです」
「初動で既に2チーム落ちましたしね」
「はい。どちらも優勝を目指したナイスファイトでした。返した2チームも見事です」
「さて、そんな初動を勝ち残った”おひるね日和”はランドマークがそのまま安地のど真ん中です。どう立ち回るんでしょうか…あの~、レインさん」
「あっはははははは、ほんと面白いなこの人たち。やってんなぁ。僕大ファンになっちゃいました」
「現在首位の”おひるね日和”、只今建物内で息を殺して獲物を待ち構えています!」
俺たちはウズメ淵で一番大きい建物の中にいる。
周囲のボックスは開けることなく放置し、さも漁ってませんよ~感を演出。
建物内の一階中央付近にはお誂え向きに紫ベストを設置。
なんということでしょう。その紫ベストを視界に捉える物陰に、身を低く屈めて食いつく獲物を息を殺して待ち構える3人の匠たち。
さぁおいで、天国に連れてってやるよ。
これが俺たちの作戦、オペレーションHideだ。
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