第1章58 神託

「祈れ。俺らに出来るのはそれだけだ」

「神よ、どうか哀れな我らに慈悲をお与えください」

「安地寄って安地寄って安地寄って」


 第2ゲーム。初戦と同様に神速の初動を超えた俺たちは、第2収縮が終わるタイミングで神に祈りを捧げていた。


 今回は南西側に安地が偏ったので、マラソンを始めて安地内へ。


 前回と同様にアルセーヌとロビンフッドのODでバリアを掠め取ろうとしたけど、さっきのインタビューで俺たちの狙いを把握したんだろう。


 バリアを脱ぐことなくダメージを通してきた。さすがにバリア抜かれるのはたまったもんじゃないか。

 それならそれでダメージ溜まるからこっちとしては構わないんだけどさ。


 それに大きく移動したことで拠点とした場所からODを発動するだけでも青バリア2つを確保できた。


 俺の白バリアはダメージを甘んじて受けてくれたことで青に進化したし、序盤の耐久力という点では解決だ。戦闘が起きればボックスから抜けるしな。


 あとはこの部隊がひしめき合った状態でいかに生き残って順位を上げるかにかかってくる。


 さっきのゲームでも第3収縮で部隊がごっそり減った。ここを越えれば中位、その次を越えれば上位が見えてくるから神に祈るのが今の俺たちのやるべきことってわけ。


 そうこうしているうちに第2収縮が終わり、次の安地が表示される。神託の結果は…。


「中位までは残れるけど…微妙!!」

「あぁ、神は我らを見放した…。使えねぇなぁ。何が神だクソが」

「あんたほんと天罰落ちるわよ」


 まぁ初戦で勝ちなさいといわんばかりの寄り方してくれたし、さすがに2回連続はないか。


 別に外したわけじゃないけど、第4収縮で多分今いるところは安地の外になる。すぐさま俺はスキルを発動して周囲の状況を再度確認する。


「近くの建物は当然全部先客がいる。外側の壁面に張り付くしかないかなぁ」

「良さそうな場所あるか?」

「ちょい待ってな…。ここかな」


 俺はマップにピンを立てて候補となる場所を2人に示す。


 それは俺が最終安地になるであろうと予測した地点に近い建物の壁面だ。


 中には籠っているチームがいるから踏み込めない。壁に張り付けば射線を180度切ることができるからここを狙うしかない。


 ただそれは他のチームも当然考えることで。


「残存部隊の数にもよるけどひとまずこの壁面を狙う。ただ、戦闘は避けられないから勝ち取るよ」

「任せろ」

「うん、生き残ろう」


 第3収縮が始まって現時点で動かざるを得ないチームが行動を開始する。今回は15チームから10チームまで減った。それでも半分残ってる。


「もっと減ってほしかったな」

「だな。俺らの移動もわちゃわちゃしそうだ」

「それな。とにかく1つでも上の順位を目指すよ」



 俺たちが今いる建物は安地の際だ。収縮が始まれば早い段階で動き出さないといけない。


 移動に備えてアルセーヌのODを発動して物資を補充。全員バリアを紫に更新してあとは必要なものを選択させた。


 俺はスキルを操作してシルフィを目標地点近くの物陰にスタンバイ。これで打てる手はすべて打った。


 やがて、第4収縮が始まり、背後からダメージ地帯を示す赤いエフェクトが俺たちを追い立てるように迫ってきた。


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