第1章46 カスタム

 カスタムの4日間は、あっという間に過ぎていった。


「よし、やっぱここにわざわざ降りるチームはいないな」

「いるわけねぇよ」

「1つか2つは同じこと考えるチーム出るかと思ったけど」

「構成とかは被るところあるかもしれないね」


「キルログ見てみろよ。早速お隣で始まったぞぉ」

「やってんねぇ。さて、生き残るのはどこになるか」

「さすが激戦区だねぇ。うわ、Aceさん暴れてる…」

「そうでなくちゃ。こっちもさっさと漁って移動するよ~。SetoはOD溜まったら速攻で使って」

「OK~。もうじき溜まる」



「チーム名決めないとだってさ」

「任せた」

「絶対言うと思った。なんかいいのないかなぁ。リスナーのみんなは何かいいのない?」


「お、いいな。こういうときは集合知に頼るのが早そう」

「おい、生活力ブロンズって書いたの誰だ。ハチの巣にしてやるから来いよ」

「一緒にされても困るわ」

「こればっかりはSetoに同意。一緒にしないで。ブロンズなのはH4Y4T0だけだから」


「お前らぁ…」

「あ、これかわいい! しかも2人のチーム名もイメージできるし」

「まぁ確かに? でもほっこりしすぎじゃない? かっこいいのとか」

「生活力ブロンズにするぞおい」

「これでいきましょう!」



ズガン!

「(バリアを)割った」

ズガン

「ダウン」

ズガン

「もう1枚割った。やべぇ、今日エイムの調子いいわ。気持ちいぃぃぃ!」

「でた、ハイになりすぎんなよ?」


「H4Y4T0ってこんな感じになることあるんだぁ」

「こいつスナ(イパー)大好きだぞ? ノンレートだとやってなかっただけで、ガチの時は大体長物1本必ず持ってる」

「あぁ、スナで頭をぶち抜いたときが一番生を実感するわ」


「くっそ」

「ドンマイ」

「ごめぇん」

「いや~、込み合いすぎたか。もっと早く進んどくべきだったかなぁ」


「いやでも左右から射線通るしキツくね?」

「だと思ってステイしたんだけど…まぁこの安置になった時点で詰んだ感あったか」

「まぁしゃあねぇ。次だ次」

「そうだね! でもなかなか戦闘起きないね。高天原でもこんなに込み合うなんて」

「まぁどこも早い段階で落ちたくないからね。本番はもっと固くなると思うよ」



「あ~ドンマイ」

「Aceかぁ~」

「完璧に漁夫られたねぇ」

「戦闘に時間かけすぎたね。早めに引く判断すべきだった」


「いや俺があそこ返さなきゃだめだ」

「まぁそこは頼む。負け越しで終わるなよ?」

「たりめぇだろ。借りは返すさ」



「ナイスひより!」

「神グレ出たなおい」

「うん、3人まとめてバリア剥がせた!」


「あれやられちゃたまったもんじゃねぇよな。全部俺らのキルにできりゃ最高だったが」

「うん、他も狙ってたね。まぁいいさ、爆弾とセイメイのODか、なんか爆弾狂って感じだね」

「ちょっと! 普通に上手いって褒めてよ!」



「いやちょっと混みすぎだろぉ!」

「ガチでそれ。まさかここまでどこもガチガチに籠ろうとするとキルムーブはいよいよ刺さらないな…」

「どこもセイメイ採用して耐久寄りにしてるね」


「まぁそれは競技でもおんなじだけど、カジュアル大会でここまでかぁ。さすがレベル高いよなぁ」

「それな。まぁ参加者の半分が元競技勢かパンデモだし、当然っちゃ当然か」

「ただこうも混むと終盤がドッカンバトルになるからやりづらいな」


「頼むぞIGL」

「うん、絶対H4Y4T0についていくから、お願い」

「任せろ」



「しゃあ! 連勝ォ!」

「ナイス!!」

「ナイス! いやすごいねホント! あたしでも最後は勝ち確って思えたもん」

「今のはよかったね。でもひよりの結界判断もすごいよかった。言う前に欲しいとこに完璧に置かれたときは鳥肌たったよ」


「それ! お前ガチで上手くなったなセイメイ」

「そ、そう? なんかこんなに褒められると恥ずかしいな」

「いや、もうセイメイに関しては免許皆伝あげるよ。大会でも屈指のセイメイ使いだよ」


「よくここまで伸びた!」

「あはは、ありがとう! 次も頑張る!」

「しゃあ! 3連勝で締めるぞぉ!」


 

 

 4日間、本当に濃密な期間だった。

どのチームもカスタムから全力で勝ちにきてたし、日毎に練度が増しているのが分かる。


 ただ、それは俺らだって同じだ。特に、ひよりは


 俺らが連勝して調子が良かった日は、他のチームを応援してるっぽい人らがポイント詐欺とか言ってコメント欄が結構荒れた。


 前までのひよりならそれを気にして萎縮してただろうけど、


「モデレーターさん、荒らす人は消してください。リスナーのみんなも悪いけど反応はしないで。こっちでちゃんと対応するから、見てて不快な人はコメ欄閉じて応援してください」


って毅然と対応してた。


 メンタルも変わり、腕前は言わずもがな。難癖って言ったけど、総合力で見れば俺たちが全チームで1番高いのは間違いないと思う。


 ただ、イコールで優勝するかは全く別ものだ。20チームの動き・思惑が複雑に絡み合い、その先に結果がある。


 確率論でいけば若干分があるって程度だ。油断なんてとんでもない。


 いよいよ明日が本番、ひよりのコーチングも終わりだ。明日本番前に渡すもなんとか間に合った。


 ここまで頑張ったひよりに報いるためにも、結果で応えてこそプロだ。明日の配信が始まるのが待ち遠しくてしょうがない。

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