Triumph Bullet【トライアンフ バレット−栄光の弾丸−】 〜プロゲーマーとVTuberの運命の出会い~
葉月幸村
第1章
プロローグ Triumph Bullet
「さぁ、舞台はついに最終局面。ここまで激戦に次ぐ激戦が繰り広げられてきたこの戦いも、残るは3部隊となりましたぁ!」
興奮した声音の実況が見つめるモニターの中では、半径50mほどの円形フィールドの中で8人のプレイヤーが動き回っていた。
西側の岩裏に3人、南側の建物内に2人、そして北東側の高台に3人がそれぞれ陣取っている。各々が銃や爆弾を手にし、緊迫した雰囲気が伝わってくる。
「解説のレインさん、現状有利なのはどのチームになりますか?」
「そうですねぇ、圧倒的にSleeping Leoだと思います。GigantとMomentも今はポジションを取れてるんですが、高所を取られている以上打ち下ろしの射線が非常にきついです。20秒後の安地収縮の開始で動かざるを得なくなりますし、2チームが潰しあった後に残った方を倒し切るというプランだと思いますね」
「なるほど。となるとSleeping Leoはまさに高みの見物というわけですか」
「ですねぇ」
「ただレインさん、そうなると...とんでもないことになりますね」
「はい、なので不利ではあるんですけど、2チームにも意地を見せてほしいですねぇ。あ、安地の収縮が始まりましたよ」
解説の二人がやり取りをしている間に円形のフィールドがさらに収縮をはじめ、ゆっくりとその面積が狭まっていく。
それをきっかけに、西と南に陣取っていた2チームが弾かれるように動き始めた。
「まず動き出したのはMomentの2人。家から飛び出しますが、やはりそれを見てGigantが仕掛けます。Momentのハウ選手、被弾を受けたまらずセイメイの結界を張り、そのままオーバードライブまで発動です!」
「いいですね。結界に入っただけではジリ貧ですし、局面の打開にはこれしかないです」
「さぁ、セイメイのオーバードライブの式神瀑符によって、Gigantに絨毯爆撃が降り注ぎます。すぐにロチシンの土隆壁で防ぎます...が...さすがに全弾は防ぎきれず。あぁっと!?ロチシンを操るMia選手がダウンです。倒したのは...
「Sleeping Leoが高台から狙ってましたねぇ。H4Y4T0選手のスナイパーで一撃で取りきりました。うわぁ、追撃とばかりにグレ投げまくってますよ。これきっついですねぇ」
めまぐるしく動く戦況の変化を、実況と解説の二人は勢いよく、かつ的確に公式オンライン配信の視聴者へ届けている。
同時接続数は10万を超え、コメントも目で追いきれない速さで縦に流れていた。
「容赦ない爆弾の追撃ですが、下の2チームにもう防御スキルのキャラは残されていません。なんとかグレネードから逃れますが...ここでGigant壊滅です。さぁそして、高台を取っていたSleeping Leoが一気に飛び降りました」
「1人欠けてるMomentは数的不利ですね。Sleeping Leoは回復の時間を与えず決めるつもりです」
「Sleeping LeoはSeto選手が1人外れて射線を広げます。すぅごいエイム! あっという間に1人ダウン!そしてそのまま...決まったぁあぁぁ! ポジションの有利を活かしきり、Sleeping Leoが勝利しました! 圧勝です!」
戦闘の最後、勝利を決める瞬間がスローモーションで再生される。放たれた銃弾がゆっくりと進み、やがてキャラクターの胸元に吸い込まれてゆく。
そして最後まで生き残った3体のキャラクターが映し出されるとともに、”
「第3試合の結果、これまで予選から3か月に渡る熱戦の果てに、Triumph Bullet Champion Ship Japan 2030(U-18)の優勝は、H4Y4T0選手率いるSleeping Leoに決定致しましたぁ!!」
3人でチームを組み、全20チームが同じフィールドに降り立ってバトルロイヤル形式で勝者を決めるゲーム性。
プレイヤーは寓話や空想上の有名キャラをモチーフにした”英霊”を選択し、スキルと強力なオーバードライブ(略称:OD)を駆使しながら戦闘を繰り広げていく。
PC版とコンシューマー版を合わせて、配信開始から約1年半で全世界ダウンロード総数は1.5億、アクティブユーザー数は1000万人を超え、世界で最もプレイ人口の多いゲームの一角に上り詰めていた。
プレイヤーは前半と後半に分かれる約2か月に渡るシーズンの中でレート戦に挑み、生存順位や敵のキル・アシストを元に得られるレートポイントを蓄積することで、ブロンズ4から始まる
Tierは上に行けば行くほどプレイヤーの質が上がっていき、勝ち上がるのが困難になる。
ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナ・ダイヤを経て、上位1%に到達したプレイヤーはグランデへと到達する。
ここまで来るだけでも至難の業。経験の浅い者では到底至れない実力者しかいない魔境だ。
しかし、100人に1人のプレイヤーたちが鎬を削ったその果て、上位2500人のみに名乗ることを許されるTierが存在した。
パンデモニウム。”地獄”と訳されるこのTierに到達するのは、まさしく化け物と呼ぶに相応しい猛者のみ。
銃の
そんな彼らのプレイは見る者に興奮を与え、e-Sportsとしても今最も盛り上がりを見せている。
既存のプロゲーミングチームがこぞってTriumph Bullet部門を立ち上げ、数多くの企業も新規事業もしくはスポンサーとなってチームを設立・参入し、アマチュアも含めれば団体数は日本国内だけで500を超えた。
人気チームが参加すればVR観戦も含めて視聴者数も数万を超えるため、ローカルの大会が連日のように開かれている。
公式の世界大会も先日第1回が終了し、ゲームの人気に更に弾みをつける結果となった。
そして1年後の第2回世界大会に向け、各国で公式主催のある大会が開かれた。それがTriumph Bullet ChampionShip(U-18)、TBCS(U-18)だ。
18歳以下のPCプレイヤーを対象とし、ダイヤ以上のTierでチームを構成することを要件とする。
この大会の目的は、各国の有望な若いプレイヤーを発掘すること。プレイヤーからすれば名を売る機会となり、プロチームとしては有望な選手をスカウトすることができる。
ひいては若年層のプレイヤーにもプロになる登竜門を作ることで、界隈がさらに盛り上がるという運営にとってもメリットのある大会だった。
公式大会同様、ポーランドルールで開かれたこの日本大会は、今しがた衝撃的な決着を迎えた。
ポーランドルールとは、規定のポイントに到達することでマッチポイントとなり、マッチポイントを迎えたチームの中で最も早く勝利したチームが優勝という、試合数に上限のないルールだ。
ポイントは生存順位が1位で12ポイント、2位で9ポイント、3位で8ポイントと続き、それに加えて1キルにつき1ポイントが加算される。50ポイントがマッチポイントと設定されたこの大会は、当初8試合前後での決着が予想されていた。
しかし、結果はわずか3試合という驚愕の短期決戦だった。2試合終了時点で順位ポイント20、キルポイント31の合計51ポイントでマッチポイントを点灯させ、次の試合でそのまま優勝。想定されうる最速での決着となったのだ。
優勝したチームは
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