おまけ 夜のキャンパス

 私には、どうにも馬鹿げた体験というものがある。

 その1つが、今回紹介する物だ。


 大学生になった私は、すっかり暗くなった大学のキャンパス内を歩いて帰途を急いでいた。

 夜の大学キャンパス内は薄暗く、時折街灯があるぐらいで明かりは乏しかった。

 歩いていると、ふと目の前にしゃがみこんで俯いている女性が目に入った。

 髪の長い女性が少し横を向いているので顔はよく分からないが、よく見ると顔の辺りが暗闇からぼんやりと浮かび上がっているように感じる。


 ――幽霊。


 第一印象はそれだった。こんな夜にこんな所で女性1人しゃがみこんでいるというのは不自然だったからだ。

 私はどうすべきか迷った。

 素知らぬ顔をして通り抜けるべきだろうか、それとも――

「あの……何してるんですか?」

 私は思い切って声を変えた。通り抜けようとした背後から襲ってくるのではないか――そんな恐怖があったからだ。

「何って、タバコ吸ってるんですよ」

 女性の手には火の点いたタバコがあった。

 そうだった。顔が暗闇から浮かび上がっているように見えたのはくわえていたタバコの火、大学病院も近いことからおそらく入院患者が抜け出してタバコを吸っていたのだろう。


 幽霊の正体見たり、枯れ尾花――。

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