第12話 熱い

友人の体験談。原爆表現があるので苦手又は無理だと言う方は閲覧をお控えください。


その日、仕事の都合で私は広島へ向かっていた。

仕事が済んだら余裕があるはずなので、広島の観光でもしようかと新幹線の席で楽しみにしていたのだ。

いつの間にかうつらうつらと寝てしまっていて気づくと東広島へ着く頃だった。

広島で降りるので慌てて身支度をしていると通路を挟んだ隣から「熱い…!」と言う声が聞こえてくる。

子供ずれの3人家族だったからあったかい飲み物でも飲んだのかな?

と思っていると。

「熱い熱い熱い!みず…!みず…!」

と尋常じゃ無いほどに暑がり水を欲し始めた。

その子の両親は戸惑い、ペットボトルに入っている水を与えようとした。

子供の視界にペットボトルが映り込むとその子はペットボトルを奪い取るかの様に取り中の水を物凄い勢いで飲み干す。

それでも足りない様で熱い…みず…と言いながら悶えている。

私はポカン…………としながらそれを見ていた。

やがてアナウンスが流れる。

もう直ぐ広島に着いてしまう。

私は慌てて身支度をして扉へ向かった。

ふと隣の席を見るとあの子は気絶した様に眠っているようだった。


広島の街を歩いていてふと思い出した。

第二次世界大戦時に此処には原爆が落とされたのだと。

原爆の犠牲者たちは皆、水を求めて彷徨ったと言う。

そこでハッとした…

あの子の水を求める姿は以前見た原爆の資料とそっくりだと言うことに………。

原爆によって沢山の犠牲者が出てしまった広島。

感受性が高い子供がこの地に宿る思いに共鳴したのだろうか?


私は少しでも弔いが出来る様にそっと祈った。

空は憎いくらいに快晴で私の肌がチリッと焼ける様だった。


後書き

友人の体験談を聞いたのでお話にしてみました。

実際にあそこには死者の魂が多く彷徨っていると僕は思います。


そして非常に私事ですが100pv有難うございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る