いつかの話


「…えぇー」



クリスマスの日の朝、部屋のカーテンを開け天気を眺めた俺は落胆した。空から降ってくるのは雪ではなく雨であり昨日の天気予報では「雪が降るでしょう」「ホワイトクリスマスになるでしょう」「積雪にご注意下さい」とか散々言っておいて雨かよとため息を吐いた。



「ふあ、ねっむ…どうしたの」



しばらく窓際で突っ立っているとベッドで一緒に寝ていた雪坂が起きてきて目を擦りながら近寄ってきた。



「今日雨降りじゃん。雪降りだっていうから期待してたのに」


「期待って…、俺は雨でよかったと思うけどな。それに雪降った所で碌なことねえだろ」


「でもせっかくのクリスマスなのに」



そう言い俺は唇を尖らせる。やっぱりクリスマスは雪だろ、ってそんなこと言うと大和にまた笑われるか…。



「さー、もうちょい寝るぞ」


「えっ」



 寒いしと雪坂がそう口にしぐい、と腕を引っ張られベッドへ連れて行かれる。



「で、でも今日は休みだしどっか出かけーー」



 そう雪坂に言うもあっという間にごろんとベッドに転がされてしまった。雪坂もベッドに入ってきてぎゅっと抱きしめられる。あったけーと言われ俺は小さくため息を吐いた。



「今日は雨降りだしもう少しこうしてようぜ


「……」



まあ雨降りなんですけどね。しばらくむすーっとしていると雪坂が頭をぽんぽんしてきた。



「そんな不満?」


「…出かけたかった」


「午後から行くか」


「…それなら、まあ」


「じゃあ決まりだな」



雪坂が嬉しそうに笑うので俺は何も言えなくなってしまう。ーー本当は朝から出かけたいのは山々なんだけど雪坂とこうしてそばに居れることが嬉しいと思った。

 なんて考えているとぎゅっと抱きしめられているのが心地よく次第にウトウトとしてくる。雪坂に目を向けるともう寝息を立てて眠っているので俺は小さく苦笑し、ゆっくり目を閉じた。



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