てのひら



「ーー今日はありがとな、楽しかったわ」


「俺の方こそ。また行こうな」



とある日の学校終わり、その日はバイトもなかったため久々に雪坂と2人でゲーセンやらカラオケやら楽しんだり、ファミレスでご飯を食べたりして過ごした後帰路へとついていた。


 夜の、そして季節がまだ冬ということもあり、時折吹く風がとても冷たくて俺は肩を震わせた。春めいてきたとはいえまだまだ寒いな、と思いながらすっかり冷たくなってしまった自分の両方の手の平にふう、と白い息を吹きかけているとその様子に気付いた雪坂が話しかけてきた。



 「寒い?」


「うん。もう3月間近なのになあ…、ほんと寒すぎるわ。…雪坂は寒くねえの?」


 「俺はそこまで寒くないかな」


「へー?そうなんだ…」



 雪坂がさほど寒さを気にしていないようであり俺は関心する。雪坂寒いの平気なのだろうか。ま、それに雪坂は人間とは違うから関係ないんだろうな…。

 そう頭で考えつつ、再び両方の手の平に息を吹きかけているとその手に雪坂の手が伸びてきて、片方の手だけ触れてきた。



「っ…!?」


「うわ、すげえ冷てえな。高瀬の手」



 立ち止まって手の温度を確かめるように触られ俺は顔が熱くなる。雪坂に手触られるなんて無いに等しかったから心臓バクバクだ。…てかそういえば雪坂と手繋いだ事ないなあ。

 俺の手をぎゅっと握っている雪坂のその手を恥ずかしながらも眺めていると雪坂と目が合い、顔が赤くなっている事に気付いたのか不思議そうに話しかけられた。



「…? なに顔赤くさせてんの」


「……お前が、」


「え?」


「えと、お前が俺の手ずっと触ったりしてるから……」


「…あ」



 俺の言葉に雪坂ははっと目線を自分の手元に向け、俺の手を握っていた手を離す。



「悪い…、嫌だったよな」



申し訳なそうに話す雪坂に俺は口を開いた。



「…嫌じゃねえよ。嬉しいやら恥ずかしいやら変な感じ」


「そうか…」


「うん」



そう言い雪坂から目を離すと雪坂の小さく笑う声が聞こえまた顔が熱くなる。気にしないように雪坂と歩くのを再開し歩き始めた時再び冷たい風が吹いてきて肩を震わせた。

 離された片手にも冷たい風が当たりうわ、寒と思っていると片手に雪坂の手が伸びてきて静かに繋がれる。



「また冷たくなってるし」


「…雪坂が手離すからだろ」


「え、そう?」



隣で俺の手を繋ぎながら面白そうに笑う雪坂をチラッと見ながら俺はあれ?雪坂と手繋いでる!と内心ドキドキしていた。今の状況が信じられなくてニヤケそうになるのを耐える。



 「じゃあしばらく手繋いでおかないとな。高瀬の手すぐ冷たくなっちまうし」

 

 「…ん」



雪坂にそう言われ俺は小さく頷くと雪坂は嬉しそうに顔を綻ばせる。会話を楽しみながら俺と雪坂はお互いに手を繋ぎゆっくり帰路を歩いた。

 

 

 

 ーー繋がれた手の平は女の人みたいに小さくなく柔らかくもないけれど、温かくて心地よく感じた。



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