Iあなたの見た桜を私はまだ知らない

Sati

第1話 目覚め

目覚めはそう、最悪だった。

激しい頭痛と全身の痛み、声を出そうにも喉から出るのは自分の肺の中の空気だけ。

目の前はぼやけてここが何処かすらもわからない、多分鼻をさすような消毒液の匂いからしてここは病院だろう。

全身の力を振り絞って腕を上げてみようとするが、結局ズキズキとする激しい痛みで諦め落ち着いて深く深呼吸をしてみることにした。なぜ自分がここにいるのか整理してみようにも頭が割れるように痛いせいか上手く思い出せない、ただ自分の中ではそれをはっきりと思い出さなければいけないような気がしてそわそわと落ち着かない。

はやく、はやく思い出さなきゃと心が焦るばかりで結局のところ何も出てこない。そうこうしているうちに視界がはっきりしてきて、ここが病院なのだとはっきり認識した。白い壁に布団自分の手には点滴が繋がれており横ではピッピッピッ…と機械が一定のリズムで音を鳴らしている。カーテンの隙間から光がさし込んでいたけど、今が朝か昼かは分からない、そんなことを考えているとガラッと勢いよく部屋のドアが開けられ若い看護師がニコニコとやってきた「眠り姫さんは今日も眠っているのかなぁー?」なんていいながら私の方へ近ずいてきて、私の顔を見るなり目を見開いて「先生!深見先生!!」とか叫びながら出ていった。うるさい看護師だな…。

手の感覚がはっきりとしてきた頃、さっきの看護師が黒髪でメガネをし、白衣をきた病院の先生らしき男の人を連れてきた、その人は私を見るなり「さくら…」と呟き、俯いた。なぜかその人を見た途端、やっと落ち着いてきていた私の心臓がドクドクと焦りだし、全身が震えどうしようもない恐怖が私を襲った。

何…これ、私この人を知らないのになんで…

その看護師と男の人が近ずいて来る度逃げなければという考えが私の脳内で渦巻いた、とうとう私のベットの横まできたその黒髪の男の人は私をじっと見つめ私の頭に手を伸ばしてきた。そのとき、私は反射的にベットから飛び起きた。その反動でベットから私は転げ落ち腕につがっていた点滴がブチッという音をたてて私の腕から針が抜けた、全身が悲鳴を上げている、声にならない痛みが私を襲いそれでもなお逃げなければという思いが私の心臓を刺激した。腕から自分の生暖かい血液が冷たい床へと流れ落ちる、その男の人は私を一瞬悲しい目で見つめ隣にいた看護師に「あとは頼んだ」と言い残して言ってしまった。駆け寄ってくる看護師に気を使える暇もなく私はそのまま気を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る