カメレオンのサーカス団(GIFT短編)
クレイG
カメレオンのサーカス団
『紳士淑女の皆々様、ようこそ!我がモンスターサーカス団の開催するサーカスへ!ここでは、摩訶不思議な連中が皆さんにあら不思議と言わせるようなサーカスを開催しています!
開催日時:2032年4月4日~4月6日
開催時間13:20〜15:40
チケット好評受付中』
街にそんなビラがあっちこっちに貼られている。
「…………」
それを見つめる一人の少女がいた。
「あんたらのショーをグッチャグチャにしてやるよ……」
少女は、そのビラを見るなりビリビリっと破り捨て、丸めて投げつけた。
「待っていろよ………"
一方その頃
「ぶぇっくしょい!」
僕は不意に大きなくしゃみをした。
「どうしたんだい団長?君らしくないねぇ……」
くしゃみをした僕にそう言って話しかけてきてのは、僕の友人にして、当サーカスの調教師、
"
「団長なんてそんな〜友人の君には本名で言ってほしいんだけどな〜」
僕が大人気なくそう言うと、稲穂は呆れた様子で
「わかったよ"色瀬 裕二"これで満足?」
と言った。
「だぁぁぁ〜違う!そうじゃない!下の名前で言ってよ!」
僕はそう言うが、稲穂は聞く耳を持たない。
「いいかい?私は君の部下だ!部下が上司を役職名で言って何が悪い!大体君はいつもそうだ!15歳の頃から"見た目"も性格も変わらない!」
その発言にカチンっと来た僕は、ついつい言い返す。
「見た目は"病気"で一生変わんないの!それに僕がおっさんやジジイになったら僕の芸風が台無しだ!僕はやんちゃ坊主だから大勢に好かれるんだ!」
「はぁ!?じゃあ何?年寄りのサーカスは価値が無いって言いたいわけ?」
「そんなこと言ってないじゃん!ピエロはメイクで年齢なんてわかんないんだから!僕はただ、僕の芸風が少年のやるものだから可愛らしく見られるって言ってんの!昔手品師にいたでしょう?双子の少年で手品〜にゃ☆って言って人気があった子たちが!あれと一緒だよ!!」
「あれは美少年って言われるような20代がやったっら綺麗に見えるでしょうが!」
「今誰もやんないじゃん!」
そんなくだらない言い合いをしていると、事務所のドアがコンコンっと2回鳴る。
「どうぞ〜」
「コラ!話はまだ……」
僕が話を中断し、入出許可を出すと、
「団長!大変です!外にこんなものが……」
そう言ってファミリーが一つのカードを取り出す。
「何々?"道化の大罪人、イロセ ユウジ。お前のお宝頂戴する………怪物の怪盗団より"ってなにこれ?」
僕が疑問に満ちた声でそう言うと、稲穂がカードを手にとってこう言った。
「予告状……だね。イマドキこんなことをやる馬鹿がいるなんて……いわゆる厨二病ってやつかしら?ゲームでしか見たことないわよこんなの。」
稲穂は大きくため息をつく。
「団長、これらの連中に心当たりは?」
ファミリーの質問に僕は首を横に振る。
「そうですか……ては子供のイタズラでしょうか?」
ファミリーがそう呟くが、僕は嫌な予感がした。
「まあ、警戒しておこうか。子供のイタズラと油断しておくとエラいことになるからね。」
ファミリーは僕の言葉を聞き終えると、承知しましたと言って、事務所から去っていった。
「はぁ〜公演まであと一週間だっていうのに、とんだ悩みのタネを植えていってくれたねこの、怪物の怪盗団とかいうヤツ。」
稲穂がまたため息をする。
「まあ、邪魔されたらそれまでだよ。優先すべきは公演に向けての練習だよ。」
僕はそう言ってこの件をいったん忘れることにした。
考えている余裕はないし。
「そっちはどうなの?調教、うまく言ってる?」
僕は稲穂にそう質問する。
「誰に質問しているんだい?調教において右に出る者はいないと言われたこの私にかかれば、動物を手懐けることなんて朝飯前だよ。目を瞑っててもできる。」
自信満々に答える稲穂に、僕は微笑んでこう返す。
「そうかい!さっすがだな〜でも、慢心して動物に食われるなんてやめてくれよ?洒落になんないから。」
それは嫌味のようなものだったが、彼女には通じなかった。
「なぁに、そうなったときには"能力"を使わせてもらうよ。あんまりそういう事態にはなってほしくないがね。」
一週間後
「レディースエーンジェントルメーン!!皆様、大っ変長らくお待たせしました!!これより!ショーの開幕でございます!」
僕は余興としてスピーチをする。まあ、どこのサーカス団もやってることだ。特にコレといった面白みもない。まあ、この余興の後が本番なんだけどね。
「それでは、まずは団長であるこの私(わたくし)のパフォーマンスから!」
そう言うと、会場が暗くなり、スポットライトが僕を照らす。ブランコに乗って宙ぶらりんのファミリーが僕めがけて飛んでける。僕がその手を掴み、しばらくブランブランと揺れていると、僕はちょうどいいところで手を話し!2回転3回転とぐるぐる回る。
そして、
「"Chameleon"……」
僕がそう小さくつぶやくと、カメレオンの尻尾が僕の体から生えてくる。そしてそれを"保護色"にすることで、誰も見えない尻尾が完成する。僕の保護色はほぼ透明化レベル。それが僕の"GIFT"。
GIFTっていうのは、この世界に広く分布するいわば超能力。そう、僕は超能力者なのだ!
そしてその尻尾を上空の見えない位置に置いてある鉄棒に巻きつけることで、僕の得意な芸ができるのだ。
「これが僕の"得意芸"!!空中浮遊マジックで〜す!」
そう、マジック。僕のサーカスはマジックと芸の融合が特徴だ。
会場には大きな拍手が鳴り響く。
(そうそうコレコレ!コレが激しくたまんないんだよ〜!)
僕が悦に浸っていると、突然会場が真っ暗になった。
僕を照らしていたはずのスポットライトが消え、観客は混乱する。
普通なら次の芸が始まる合図と思うだろう。
でも、僕の芸はここから降りるところを含めて芸なのだ。
それを知ってる一部の人が混乱し、騒いだのが伝染したのだ。
実際、僕自身も困惑している。
ここから降りようか降りまいか悩んでいるとスポットライトが突如として一点に集中する。
そこには、ぼんやりと"カメレオンの怪物"の姿が見えた。
突如として現れた怪物は、しばらくすると姿を顕にし、スピーチを始めた。
「ショーはここまで……ここからは……」
そう言うと、会場から数人の人間が席を立った。
「惨劇の始まりだァァァ!!!」
すると、その数人の人間は各々動物の怪物の姿へと変身し、周囲の客に攻撃を仕掛ける。
すると……
「GAOOOOOO!!」
「KIEEEEEEE!!」
などという鳴き声や方向と共に、動物が怪物に攻撃を仕掛けた。
「皆さん!逃げて!!」
会場の奥で出番を待っていたはずの稲穂や、他のファミリーが客を出口へ案内する。
僕はそれを見て、急いで下へと降りて、カメレオンの怪物に声をかける。
「やあやあやあ……見事なスピーチだったよ!感動した……素人のやるスピーチにしては上出来だったんじゃないか?んで、君は誰?」
一通り煽った後、カメレオンの怪物に名前を聞いた。
「なんで恨んでるお前に教えなきゃいけねぇんだ?あ"あ"!?」
相手はオラついた様子でそう言う。
(声質的に女性といったとこかね?)
そう考え、僕は余裕の表情で返す。
「おぉぁ怖い怖い………そんなんじゃあ婚期逃しちゃうヨ?」幼稚だけど、相手も幼稚そうだし、こんくらいでいいんだよ。こんくらいで……
「テメェ……本当に存在から何から何まで癪に障るゴミグズ野郎だぜ………てめぇら!いつまで畜生の相手してんだ!こっち手伝え!」
そう言うが、カメレオンの味方の一人?がこう返した。
「お前は相手してねぇからわかんねえだろうけど、この畜生共つぇぇんだよ!自分が相手してから言え!」
そう言い返す。当然だ。
稲穂から聞いたが、彼女はサーカスに使う動物にもし怪物の怪盗団と戦闘が巻き起こった場合の為にいろいろ教えてたらしいから。
「おやおや、人望があまりないみたいだねぇ?プププッ」
僕が嘲笑すると……
「………たな?」
「ん?」
「笑ったな……この……オレを……笑ったなァァァァァァァァ!!!!!」
そうカメレオンの怪物が激昂する。
「おうおうおう……そんな怒らないてくれ?醜悪なカメレオンヘッドが余計に醜悪になってしまうよ?」
僕も似たようなGIFT持ってるから普段はそう思わないんだけど、相手が相手だからさらに煽る。
「うるせぇ!」
相手はブチギレモードで舌がを伸ばす。するとソレは服に付着する。
「やば!」
付着した舌が僕を相手に引き寄せる。
「勝った!」
相手は歓喜して、僕を上空へと投げ飛ばす。
(まずい!)
そう思って尻尾を取り出し、鉄棒を掴もうとするが、
ガンッ!
という音ともにカメレオンの怪物が鉄棒の方へと登ってきた。
「お前の動きは封じた!」
そう言って怪物は、舌を再度僕に伸ばす。
(終わった。)
そう思った。
その時
「あっづ!!」
どこからともなく火の玉が怪物の舌に直撃し、怪物は舌を引っ込める。
「"GOAT TO HELL"………"FIRE BALL"」
ふと下を向くと、そこには、黒魔術師のような格好をしたヤギの獣人が杖を構えていた。
僕はそれが誰か知っている。
「稲穂………!!」
感激してそんな声が出る。
そしてヤギの獣人は僕の方に跳躍し、僕をキャッチする。
「まったく……世話の焼ける団長さんだ……」
優しい声色でそう言う。やっぱり稲穂だ。
「フフ……ありがとう、稲穂。」
そうこうしている内に、僕らは地面に着地する。
「アッチチチ!!クッソぉ!小癪な真似を〜!!てめぇら!」
カメレオンの怪物はそう言うが、返事は帰ってこない。
「てめぇらどうした!団長サマが声かけてんだ!返事くらい返せ!!」
そう言うが、一向に返事は帰ってこない。
「一体どうなってやがる………?」
怪物は混乱していると、稲穂が口を挟んだ。
「お仲間の心配かしら?それだったらあそこよ。」
稲穂がそう言って指さした先には、折に入れられた人間と、それを見張る動物がいた。
「んな!?」
「驚いた?私の調教した動物はみ〜んな賢いの。貴方や貴方のお仲間さんと違って………ね?」
そう言うと、怪物は憤慨する。
「どいつもこいつもオレを馬鹿にしやがって!!ユルセン!!」
そう言って怪物はこっちに舌で攻撃を仕掛けてきた。
「おっと、それはさせないよ?」
僕はそう言って舌を伸ばす。
「!?」
怪物は混乱するが、僕は一つ洒落が思いついたのでそれを口にした。
「これがホントのベロチューってね?」
そう言って相手の舌を跳ね返し、相手の身体に舌を巻きつける。
そして僕に引き寄せてある程度のところで拘束を解く。
「君の敗因はたった一つ。能力の練度不足だ!!」
そう言って舌で相手の体を何度も突く。
「ハイハイハイハイハイハイハイハイハイィィィ!!!」
どこかの漫画であるようなラッシュを叩きこむ。
「フィニィィィッシュッ!」
「グァァァァァァァァァ!!!」
僕の掛け声とともに、カメレオンの怪物の叫び声が響く。そう、僕はカメレオンの怪物にトドメをさしたのだ。
そして怪物変身が解け、落ちてくる。
「おっと、予想してたけど裸だ。んじゃ、ここは君に任せるよ稲穂。僕にレディの裸をまじまじと見る趣味はないからね。」
そう言って僕はずらかった。
「あ、こら!」
稲穂が声をかけるがもう遅い。
僕はもう外にいるから。
「はぁ、まったく…本当に困った団長さんだよ。それ!」
おそらく中では稲穂が彼女をキャッチしてくれただろう。ん?待てよ……
「僕って彼女の体を舌で突いたよね?」
僕は背筋をゾクッとさせた。
(全部終わったらそこだけ謝ろう。)
僕は固く決心した。
数日後
「今回の公園は以上になります。それでは、また次の公園でお会いしましょう!では!」
こうして、いろいろあったが最後の公園が終わった。
僕達は打ち上げを終え、各自帰宅していた。
「しっかし、一体なんで彼女達は僕を目の敵にしていたんだろう?」
帰りの道中、僕はそう呟いた。
「どうやら、彼女達は私達を真似たマジックをしていたらしい。でも、彼女達の練度不足で、私達のショーには及ばず、批判が殺到したみたいだけど。」
同じ帰り道の稲穂が僕の疑問に答えを返す。
「なにそれ!?逆恨みじゃん!」
僕がそう言うと、稲穂がこう返す。
「逆恨みだろうが否定されることは辛いものだ。まあ、いっそのこと、ものまね芸人としてだったら人気が出たかもね。」
稲穂のその言葉はきっと彼女たちに刺さるだろう。今回の件はこれで幕を閉じるが、いつまたこういうことが起きるかわからない。
これからも、十分注意していこう。
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