オトナに見えた彼女の胸の内が凪げば
闇野ゆかい
第1話儚く薄れて、消えていく憧れの将来の夢
公園のジャングルジムの側に小さなバケツと小さなスコップが置かれた砂場がある。その砂場で遊ぶ二人の姿を遠巻きにながめている光景に未だ実感が湧いていない。
現実感が掴めないのは夢だからと腑に落ちたのは、
見覚えのある公園にも
視界に広がる景色についての記憶が、朧げなことに違和感を感じている最中だった。
「ママぁ、パパがブランコにのったまま怖い顔して見てるー」
「そうねぇ、怖い顔してるねパパ。パパはお仕事で疲れてるから休ませてあげて、リノ。さあ、お山作りの続きをしようね」
「わかった!」
公園の砂場で幼い女の子がスコップを使って山を形作っているのを三十代の主婦らしき女性が付き合っている。
どうやら、俺が幼い女の子の父親で三十代の主婦らしき女性の夫らしい。
娘の遊びに付き合う嫁は、親近感のある雰囲気を身体から滲みだしている。
「な……
「どうしたの、
ブランコの繋いだ鎖のひんやりとした感覚を掌と五指で感じながら掠れた声で嫁の名前を呼んでいた。
「いや……なんでも、ないよ
「そう……なら良いけど」
「パパぁーっ!おなか、空いた。ねぇねぇ、空いたよ!パパ、ママ、おなか空いたよーっ!」
娘が転びそうな勢いで駆け寄ってきて、飛び付いて昼食をせがんできた。
砂が付いた手のままに娘が抱き付いてきた。
♢♢♢♢
上瞼が上がり、目覚めると見慣れた天井が瞳に映る。
瞬きをし、就寝中に見ていた夢を必死に記憶に留めようとするが夢の内容が徐々に薄れていく。
「凪狭……」
欠伸が漏れたような呟きが、室内に溶けていく。
「あれ?なんで凪狭って言ったんだろ……?まあ、いっか……どうでも」
上体を起こし、足をベッドから下ろして立ち上がる。
締められたカーテンの僅かに空いた隙間から射し込む陽射しに気にもとめず、俺は自室を出ていく。
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