朝食
すぬーぴー
第1話
朝食の時間。
食卓に父の姿がない。
父と母、私、妹の4人でテーブルを囲むのがいつもの朝の風景なのだが、今日に限っては私と母の2人だけ。
まぁこんな日もあるか。
「「いただきます」」
………信じられない。
まさか今朝の朝食がステーキだとは。
朝からステーキを食べるなんて聞いたことがない。
「お母さん」
「なにー?」
「これなに」
「ステーキ」
「なんで?」
「別にいいじゃない」
別にいい?何が?いいのかな?いいのかも?
朝にステーキを食べるなんて普通じゃない。
でも、頭が良くて会社の人から尊敬されていて美人で優しくていつだって正しいお母さんが今朝の朝食はステーキだって決めたんだったら、それは普通のことなんだ。
それに、こんな日もあるよね。
朝食がステーキの日だってきっとあるんだ。
私はステーキを一切れにして口に運んだ。
すると、今までに味わったことのない不思議な味がした。
「不思議な味だね」
「そう?おいしくない?」
「んーわかんない。でも癖になる味かも。…あっ、そういえばお父さん今日いないね」
「そうね。こんな日もあるわよ」
「そっか」
ステーキをゆっくりと食べながら、そういえばこの前お父さんとお母さん喧嘩してたなーなんてことを考えた。
互いに大声を出して何やら言い合いをしていたのを覚えてる。
なんで喧嘩してたんだろう?
「ねぇお母さん」
「んー?」
「この前さ、なんでお父さんと喧嘩してたの?」
「………何を言ってるの?」
「え?」
「お父さんはもう亡くなってるじゃない」
「あ」
そうだった。……あれそうだっけ?
じゃあお母さんと喧嘩をしていたのは誰?
そもそもお母さんは喧嘩してた?
そんなことあったっけ?
………ダメだ、思い出せない。
まぁいいか。
ステーキを一口、二口と食べるたびに何かが欠けていく感覚を覚えた。
でも、私は気にせず食事を終えた。
「ごちそうさまでした」
朝食 すぬーぴー @kaidoutsubasa
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