廃神社が本当はすんげぇ神様だったわけ。

@Fukunokamifukunosin

第1話 孫

秋雨が続く手が凍てつく寒い日。

七曲りの坂道を上る白い軽自動車。

坂上の神社手前は

つの字としの字のきついカーブがある。

つの字カーブ手前で減速し運転席から山に会釈する。

武様タケサマ

イチの孫のヨウが来ています。」

茶茶チャチャ

一が亡くなり何年じゃ」

少し考え

「確か30年くらいかと」

「そうか、、、そんなに月日が経ったか。」

下を見て

「陽は何歳じゃ。」

「今年で46歳かと。」

「ここに越してきて46年か。」

昔を懐かしむように言った。

車はしの字カーブに差し掛かる。

キーキーキーキッーー!!!

タイヤが鳴る。

タイヤが滑り、崖の方へ

「危ない!!」

茶茶が言うと同時に

ひらりと扇をひるがえし

ブワァーと風が車を道の方へ押し上げる。

「だからこんな日に来るもんじゃない」

ため息を吐きながら武様がおっしゃった。

雨が続いていたため

落ち葉が雨水を含み、氷の上を滑る様な路面になる。

車は草草ボウボウの神社手前の駐車場に無事に着き

コンクリートが所々ヒビ割れている場所に

車をバックし車を停める。

駐車場から湖を見下ろす。

晴れた日はキラキラとエメラルドに輝き素晴らしい眺望だ。

雨の日は湖面が雨で揺れ、静けさを感じるがこれがいい。

エンジンをかけ前進し始め

下のお墓のある駐車場に停めた。

「こちらには顔を見せないのですね。」

残念そうに茶茶が言う。

「おのこではないから、一の言いつけを守っているのであろう。」

「陽が、まだ小学生だった時

『上ったかい!?下がったかい!?』

と十五夜にお友達を連れて神社まできましたね。お供えのお菓子ほしさに」

笑顔が溢れる。

「あの後、一にこっぴどく叱られてたからな、おなごは妖怪に攫われる。妖怪に喰われたいか!!!となっ。ハッハッハッ。」

「夜に子供たちだけでお参りに来るのは、あれが最後だったかのぅ。」

「ここら辺のおのこはおなごよりも女子でしたからね。」と羽を毛繕いしなが茶茶が言った。

昔を懐かしむ武様と神使の茶茶。

あの頃は境内も氏子たちが草刈りをしにきたり、十五夜や初詣はもちろん、赤子が産まれればお宮参りに七五三、13参りや成人式、沢山の行事などで綺麗で賑わっていた。

今は鳥居は崩れ、境内は草が伸び放題になり神社内も壁紙は落ち見るも無惨な状態だ。

来る人間といったらヘンテコな機材を持った輩や、肝試しにくる者たちだ。

「そういえば最近は、ハロウィンとか言うのが外から来て10月末日に祭があるそうですが、、、」

「10月末にか!?」

「はい。百鬼夜行の日であります。」

「人が人ではなくなってしまうのぅ。寂しいものだ。」

「だからでしょうか。ここもこのような事になってしまったのは。」

茶茶がため息混じりに言った。


車内でレインコートをきた陽が車から菊の花束と線香を持った状態で出てきた。

傘をさすには風が強いと思ったのか外に出てから空を見上げて

レインコートについているフードを被った。

素手には雨が当たる。

寒さで手が痛くたり赤くなる。

「武様。相変わらず一にそっくりですね。」

「一はあんなに青白くないぞ!陽は白ぎるのじゃ!」

「一は小麦色に焼けた肌でしたね。」

「おのこの時から、逞しい惚れそうな子じゃった。」

「不思議な子でしたからね。私や木や草、動物、人には勿論何より武様を大切に大事にされていました。」

「私も同じ気持ちじゃ。」

墓前に行き花瓶を取り

中を覗く。

中には雨水と腐った花の茎が残っていた。

花瓶を手に水道がある場所まで行き花瓶を洗った。

水道の水の方が雨より暖かい。

「なぜ毎年、自分の誕生日にくるのでしょうか?」

「わからんのぅ」

墓前まで戻ってきた陽が花を飾り、線香に火を付けるが雨で思った通り付かない。

武様がそれを見かねて扇を小さくひるがえした。

小さな風が吹き、線香に火が付いた。

線香を墓前に供え手を合わせ静かに目を閉じた。

何らや会話をしているよう。

「何を話しているのでしょうか?」

「わからんのぅ。」

陽が話を終ったのかスクッと立ち上がる。

お墓には、石で作られた物入れがある。

知らない人はそれが荷物の置き台にみえるだろう。

陽はそこを開けて何かを出しレインコートの右ポケットに入れた。

車に戻り、後部座席から

白い紙に包んである包みを三つ出した。

「あれは!!!」茶茶が言う。

「止めよ。早う!!!」武様が静止すように茶茶に命令したが間に合わず

白い包みが濡れない様に

レインコートの左ポケットに入れ

競歩をしながら上に向かい歩いてくる陽。

草がボゥーーとなっている神社境内外にある東にある道を進み

ポケットから包みを取り出し

東の山神様の祠に

お供えものを添えて手を合わせる。

「お綺麗な白様ハクサマどうぞ気持ちばかりですがお受け取り下さい。」

陽がお供え物をすると白い上質な着物を羽織った白様が武様の所にいらした。

「武、久しぶりじゃのう」

妖艶な笑み浮かべる。

「姉上様、お久しぶりでございます。」

「まさか一の孫に呼ばれるとは思わなかった。」

「姉上様、陽には姉上様の姿は見えないはずです。」

「でも陽はいつも私の前にきて『お綺麗』と言うから見えているのであろう。」

「見えていたら、一のように声をかけるはずです。白様。」と茶茶。

「まあよい。どちらでも。一からの吹き込みかもしれんしのー。」

「姉上様がいらしたということは、、、。」

「西にも行ったかのー。」

武様が青ざめる。

西の道にスタスタとものすごいスピードで進み

西にある山神様の祠の前にいる陽。

またポケットから包みを出し

お供え物を添えて手を合わせる。

「愛らしい赤様セキサマどうぞ気持ちばかりですがお受け取り下さい。」

武様の目の前に可愛らしい赤い上質な着物を羽織った赤様が登場し

「兄上様、ご無沙汰いたしております。」と和かに笑って

「姉上様も、お久しぶりです。」と少しイラつきながら言った。

「またお二人で喧嘩はしないでくれないかのぅ」と武様。

なんとも言えないタイミングで

陽が独り言を言った。

「お綺麗な白様と愛らしい赤様は喧嘩なんてしません。お二人いらしたら無敵。なんとお二人とも神々しいのでしょう。見惚れてしまいます。」と 。

「私たちは綺麗な神。喧嘩などしない。なぁ赤よ。」

「姉上様そうですね。」と赤様が和かに笑った。

「年に一度どちらかわからんがのぅ。両方かのぅ、、、矢を私に向かい放っているではないかのぅ。」

要塞の様に作られている神社なので矢は当たる事はないが、、、。

「わたしたちはそんなことしたかしら?」と

お二人揃っておっしゃった。

陽を見て白様が

「武よ。陽の手にもう一つお供えがあるが、毎年二つのはずでは?」

「武様、こちらに陽が!!!

階段を上ってきます。」

「茶茶よ!

陽の前に羽ばたき静止せよ!」

草を掻き分け階段を上ってくる陽。

陽の前に一羽の黒いカラスが横切った。

陽は気にする様子もなく階段を上ってくる。

階段を上り終え、神社を見る。

土壁は剥げ壁に穴が空き、賽銭箱の上の鈴はなくなり

落書きもされ、ガラスも割られ

見るも無惨な状態だ。

神社は荒らしが多いので鍵がかけられ施錠されている。

陽はレインコートの右ポケットから錆びれた鍵を出した。

「何故?!

鍵が陽の手にあるのだ!!!」

武様が眉間にシワをよせ鍵を凝視する。

「あの惨事の後、無くなったのでは!?

茶茶急げ鍵を奪うのだ!」

陽の手にある鍵を奪おうと羽を羽ばたかせ勢いよく

陽に向かって行く。

「茶茶さん。無駄です。」

陽が口を開く。

「一じいちゃんの言いつけで

この日まで武様たちを見ない様に、聞こえない様に過ごしていました。

でも、今日は違います。

一じいちゃんとの約束を

守ろうと決心してココにきました。」

茶茶が

「おなごには出来ん事!今日は帰られよ!!」

フッと陽が笑い。

「もぅおなごでもおのこでもないのです。

それにこの時代、差別的発言はダメですよ。」

武様が

「今まで何故?!だましてきたのかのぅ。陽よ。」

「申し訳ございません。一じいちゃんとの約束を守るため。

武様と昔交わした、一じいちゃんとの約束を私が行いたいのです。」

武様を真剣に見つめた。

「陽よ、、、

そうすればそなたの家族も、、、

同じようになるのじゃ。

果たせなければ。」

出来れば避けたい。やらせたくないのだ。困難な道を一や守だけではなく

陽までもか、、、。

何という。

残酷な。

「願い事は一つの文章に纏まっていればいいと聞きました。

私はずるいのです。武様も家族も守りたいのです。

私を信じて、願い事をさせて下さい。」

顔を上げた。

もう一度頭を下げ

「それに、今はまだ目が見えますが

時期に見えなくなり

じいちゃんとの約束を叶えられなくなります。

だからどうか!!」

お辞儀をしたレインコートのフードから雨水が滴り落ちる。

「目が見えないとはどうしたかの。」

白様が首を傾げた。

頭を下げながら

「特定疾患。難病に罹りました。だから時間がないのです。」

「それは、治る流行り病ではないという訳ですね?武様どうしましょう。」

陽の前に立ち塞がった茶茶が振り返りながら

武様に伺いを立てた。

「陽よ。

もしこの願いを私が聞き入れれば

私と、そなたは

神である私と人間でありながら神使という関係になるのだぞ。」

陽はニカっと笑い

レインコートのフードを取り雨が髪を打ちつけた。

、、、あれは。

あの姿は!!!

一よ。昔を思い出したのぅ。

あの日の約束を、、、そうだのぅ。

試してみる価値はあるかもしれないな。

、、、ありがとう一よ。







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