第6話 女王蜂様 アイドルグループを爆誕させる

「こっ、これは」

「『のぼり坂くだり坂ま坂46フォーティシックスの……」

「『まいまい』こと……」

新屋舞あらやまいだーっ!」


「うおおおおおーっ」

 

 大歓声が上がる。


 何てこった。「鋼の催眠術師」粕川衆作58歳。一番やりたかったことは、「のぼり坂くだり坂ま坂46フォーティシックス」のセンター新屋舞になることだったとは……。


「まいまいーっ」

「かっ、かわい~っ」

「まっ、ままま、待てっ!」


 さすがに制止が入る。誰かと思えば、鬼熊先生だ。

「みっ、みんなっ! 冷静になれっ! あれは確かに『まいまい』だが、中身はあの『粕川先生』だぞっ!」


 うっ、うん。いいこと言うね。鬼熊先生。

 でもね、さっき吹いた鼻血を拭いてから言った方がいいと思うよ。


 さっきから立ってこっちを見ていた「まいまい(粕川先生)」だが、おもむろに周囲の匂いを嗅ぎだした。


「うーん。なんかネガティブな匂いがするぞ~。だーれだ、ネガティブなマインド持ってるのは~」

 突然の「まいまい(粕川先生)」の発言に、みんな、ぎょっとして注目する。


「そーんな、ネガティブなマインドは~っ、舞と一緒にポイッだぞっ!」

 たちまち鳴り響くミュージック。「のぼり坂くだり坂ま坂46フォーティシックス」の大ヒット曲「ネガティブマインド、ポイッ ポジティブマインド、ゴー」のスタートだ。


「うおおおおーっ、まいまいーっ」

 さっきの言葉はどこへやら、鬼熊先生は教壇で歌い踊る「まいまい」に突進した。


 もちろん、僕は最前列真ん中の席からとっとと逃げ出す。鬼熊先生は僕の使っていた机に飛び乗ると、おもむろにペンライトを振り出したって、あんた、それ常備してるんかい。


「わーーん。まいまいー」

 号泣してペンライトを振る鬼熊先生を見た蜂野先生は微笑む。


「あらあら。これじゃあ、熊谷先生も『働き方改革』しないとね」


 両腕をまっすぐ前に突き出し、熊谷先生にも念を送る。


 たちまち、熊谷先生も真っ白い光に包まれて、へんーしんっ!


「うおおおおおーっ」

「今度は同じ『のぼり坂くだり坂ま坂46フォーティシックス』でも……」

「『まいまい』とツートップと言われる……」

「『あかあお』こと……」

「『赤城碧あかぎあおい』だーっ!」


   


 

 


 

 

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