第6話

 ライラは自室に戻ると、仮面の仕上げを始めた。

 何枚か布を木の仮面に張り合わせた。目元にあたる部分には、黒とシルバーの糸で刺しゅうを施した。

「こんな感じかしら?」

 ライラは自分で仮面をつけてみた。自分にはすこし大きかった。

 

「ライラ、今王宮から手紙が届いたのですがゴードン王子と何かあったのですか?」

 母親のレイスがドアの外から話しかけている。

「手紙ですか? ゴードン王子から?」

「ええ、何か思い当たることはありますか?」

 心配そうなレイスに、ライラは笑顔で答えた。

「少し、約束をしただけです。お母様。安心してください」

「そう……失礼がなければよいのですけれど」

 ライラがドアを開けると、レイスはそっとライラに手紙を渡した。


「ありがとうございます、お母様」

 ライラはレイスに微笑みながら礼を言い、ドアを閉めた。

 手紙には、『仮面の完成は楽しみですが、無理はなさらないでください。ゴードン』とだけ書かれていた。

「まあ、お気遣いくださったのですね。多忙でしょうに……」

 ライラは手紙を本に挟み、棚にしまった。


「出来上がりを楽しみにしてくださっているようですし、もう少しで出来上がりそうですし……」

 ライラは結局その夜は遅くまで、仮面の仕上げに取り組んだ。

「やっと出来ました。……我ながら悪くない出来ですわ」

 ライラは仮面をつけて鏡に自分の姿を映してみた。

「ゴードン王子に似合いそうな、シンプルだけど美しい白色の仮面……。喜んでいただけるかしら?」

 ライラが窓の外を見ると、そこには暗闇が広がっていた。

「あら、もうこんな時間だったのですね」

 ライラは仮面を絹の袋に入れ、リボンをしてから眠りについた。


 翌日、ライラはゴードン王子あての手紙を書いた。

『約束のものが出来上がりましたので、都合の良い日をおしえてくださいませ。届けに参ります』

 手紙を出した翌日の早朝、ライラの屋敷にきたのは返事ではなくゴードン王子本人だった。

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