第4話
「ライラ、ゴードン王子とは仲良くなれそうかい?」
「ええ、お父様。それに私、ゴードン王子と素敵な約束をしました」
母親がたずねる。
「どんな約束ですか?」
「それは秘密です」
クロース辺境伯達は家に着くと馬車を降り、それぞれの部屋に戻っていった。
自室に戻ったライラは人形の頭の作り方を見直した。
「ゴードン王子の顔の大きさは……このくらいでしたわね」
ライラは人形をつくるときに使っている道具で、木を彫ってマスクの土台を作り始めた。
「なかなかむつかしそうですね」
ライラは一週間かけて一生懸命木を削り、なんとか仮面の形になったのを確認した。
「ゴードン王子につけてみていただきたいけれど……私だけでゴードン王子を訪ねてもよいのかしら?」
ライラは夕食のときに父親のダルト・クロース辺境伯に尋ねることにした。
ライラが仮面のデザインを考えていると、ドアがノックされた。
「ライラ様、そろそろ夕食の時間です」
メイドの声だ。ライラはデザインを描いた紙を裏返しにして立ち上がり返事をした。
「はい、今行きます」
食堂に行くと父親のダルトと、母親のレイスが談笑していた。
「遅くなりました、申し訳ありません」
「大丈夫だ、ライラ。さあ、食事にしよう」
ダルトは食前の祈りをささげた後、夕食が始まった。ダルトが言った。
「アラスター王もシンディー王妃も、誠実そうだったな」
「ええ、気さくで気の置けない人柄でしたわね。今日話した限りでは」
レイスの答えを聞いて、ライラは少し安堵した。
「社交界でも一目置かれているようだ。ただ、ゴードン王子は……」
「ええ、少し……おとなしすぎるというか……覇気がない感じでしたわね」
ダルトとレイスの会話にライラは割り込んだ。
「ゴードン様は……心にも傷を負っていらっしゃるだけで、優しい方のようですわ」
ライラが珍しく発言したので、クロース夫妻は驚いた。
「ずいぶん仲良くなったのだね、ライラ」
「あの、そういうわけではないのですが……」
ライラはそれ以上は何も言わず、静かに食事を終えた。
「それでは、部屋に戻るとするか」
立ち上がったダルトに、レイスは勇気を出してたずねた。
「お父様、私だけでゴードン王子に直接会いに行ってもよろしいでしょうか?」
「……護衛の兵をつれていくならば……グローサ国王に許可を求めておこう」
「ありがとうございます、お父様」
「ライラはゴードン王子が気に入ったのね」
母親の言葉にライラはあいまいな笑みを浮かべた。
ライラは自分の作った仮面をつけたゴードン王子を想像してドキドキしていた。
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