第35話 それもトレーニング

宿舎に行きみんなで夕御飯を食べていた

昼間の試合で悔しい思いもしたが大人数でご飯を食べて暗い気持ちも吹き飛んだ

僕は小柄な体のせいもあり少食でみんなより食べる量が少ない

すると後ろから


「もっと食えよチビ。」


振り返ると3年生でキャプテンのシュート君がいた

僕は


「自分だってチビのくせに。」


凄く小さな声で言ったのだがシュート君は笑いながら


「聞こえてんだよ。」


と言って肩パンしてきた

セレクションの時の事もあってよく僕にちょっかい出してくる

僕は誰にも言わなかったけど実はそれが凄く嬉しかった

シュート君は半分笑顔で

でも少し真剣な感じで


「寝る前に部屋に来い。」


そう言って戻って行った

僕はなんだろう?って思いながらも寝る前にシュート君の部屋に行った

部屋に行くとシュート君はサッカーの動画を見ていた


「空、来たか?ちょっと待ってて。」


と言われ動画が終わるのを待っていた

良く見ると今日の試合の動画だった

全部では無いけど手の空いているコーチが撮れる試合はビデオカメラで撮っているので見たい人はいつでも見れる様になっているらしい


「全部の動画見てるんですか?」


僕は思わず聞いてみた


「全部って訳じゃないけど大体見てるかな。俺みたいなチビが生き残るには常に勉強しなくちゃだし何より失礼だろ?せっかくビデオ撮ってくれてるのに。」


シュート君は当たり前の様に言った

続けて


「空を呼んだのは夕御飯残したろ?それじゃダメだ。俺達チビは飯もトレーニングだと思わなくちゃ。技術はいくらでも磨ける。上手くはなれる。でも強くはなれないんだよ。キャプテンとして上手いだけの奴はいらない。強い奴が必要なんだ。それに作ってくれた人にも失礼だしな。飯残すなよ。」


今までシュート君がプレイしてるのを何度も見てきた

体は小さいのに全然ボールを奪われない

今日の僕みたいに転んだり吹っ飛ばされてる所を見た事がない

見た目は同じ小柄だけど中身が全然違った

僕は自分が凄く恥ずかしくなった


もうご飯は残さない

技術は磨く

でもそれ以上に強くなってみせる


ありがとうシュート君


また1つ前に進めた


そんな気がした

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