第27話陽葵ちゃんとパーティ会場へ

「お迎えにあがりました。しいくがかり先生、いえ、海老名 樹 様」


「えっと、その様って言うのは勘弁してくれないかな?」


「そうは行きません。あなた様が主賓のパーティ会場にお連れするのが私の職務故、その主賓たるあなた様にそそうなどあってはならないことです。敬語をお止め頂くのは海老名様のお人柄でしょうが、こればかりは私の職務上故ご容赦ください」


「……はい」


俺は放課後辻堂さんが手配してくれたハイヤーの丁寧な物腰の黒服のおじさんの対応に苦慮していた。俺はただの高校生だ。こんな歳のおじさんに敬語なんて使われるような人間じゃない。とは言うものの、おじさんは確たる強い意志を持って言っている。


……とても俺なんかに止めることはできそうにない。


「あの、私も行っていいと聞いてるんですが?」


「伺っております。海老名様の恋人の厚木 陽葵様ですな。辻堂様からは一緒にお連れするように言われております」


「こ、恋人! ひゃああああ! う、嬉しい! ありがとうおじさん!」


「どう致しまして」


なんか陽葵ちゃんの方に少し気さくに話すのに違和感を覚える。


陽葵ちゃんてとんでもお金持ちの女の子だから、本当は俺より遥かに格上の存在だと思う。


「先輩、じゃ、行こうよ!」


「あ、ああ、早く行かないと目立つしね」


いや、学校の正門の真前に黒塗りのハイヤーをつけて迎えに来られると目立つこと目立つこと。それにこの車って……ベンツだよな? それもリムジンタイプで普通より長いやつ。


「では、海老名様」


そう言って黒服のおじさんにドアを引いてもらって車に乗り込む、同じように陽葵ちゃんも乗り込んで来る。


車の中なのに対面シートで陽葵ちゃんと相対する。


「なんか緊張しちゃうね?」


「うん、この車って顔はパパに似とーけど凄く大きかね」


「……あ、あは」


陽葵ちゃんのお父さんの愛車がなんなのか察して思わずビビる俺。


「飲み物が冷蔵庫に入っております。ジュース類ですが、どうぞご自由に」


おじさんがそういうと、自動的に冷蔵庫? と思しき物のドアが開く。


「ありがとうございます。何から何まで」


「ありがとう。おじさん」


「ではごゆっくり。私は何も見ておりません故」


そう言うと運転席と客席の間を仕切る壁が迫り出してきた。


えっと? 俺と陽葵ちゃんを二人っきりにすると何をすると思ってるのかな? このおじさんは? イチャイチャはしたいけど(笑)


「先輩、こんウィリク○ンのジンジャーエール炭酸強めで美味かばい」


「ほんと、俺も飲みたい」


「じゃ、陽葵ん分けてあげる」


そう言って、頬を赤くして瓶を差し出す陽葵ちゃん。思わずゴクリと唾を飲む。


もう1本新しいのがあるけど、ここは……関節キスだよな。陽葵ちゃんもわかっていて……きっと……ヤバい、俺も顔が赤くなってきたかも。


「ありがとう陽葵ちゃん」


そう言って陽葵ちゃんが口にしたジンジャーエールに口をつける。


初めての関節キス。なんか顔がカァーと熱くなる。


「美味しいー!」


「でしょ? 先輩」


いや、本当は陽葵ちゃんと関節キスできて美味しいような気がしてる。


「……せ、先輩」


「何? 陽葵ちゃん?」


「と、隣に行ってもいいですか?」


「う、うん」


思わず顔を上下に激しく振ってしまった。


陽葵ちゃんが俺の隣に来る。近い! こんなに近くに女の子がいるなんて!


陽葵ちゃんの香りはレモンのいい匂いだった。


ピトッと俺の体にくっ付いて来る陽葵ちゃん。もう、陽葵ちゃん大胆!


そ、それに……なんかあたってるんだけど? 柔らかいものが?


これはあれだよな? 胸だよな? 陽葵ちゃんは控えめだけどしっかりあるからな。


俺は頭がクラクラしながらつい意味もなく陽葵ちゃんの名前を呼んでみる。


「陽葵ちゃん?」


「はい、先輩」


そう言うと陽葵ちゃんがこちらを見る。小柄な陽葵ちゃんは俺を上目遣いで見る。


下からそんな可愛い顔で見られたら俺の心臓のBPMが世界新記録を更新したと思う。


「陽葵ちゃん」


もう一度名前を呼ぶと陽葵ちゃんは……すっと目を閉じてキス待ちの顔に!


いや、そんなキスを促した訳じゃ! でもめちゃめちゃ嬉しい!


陽葵ちゃんは俺がキスをせがんだんだと思ったんだろうな。勘違いだけど、もちろん俺は陽葵ちゃんとキスしたい。だからここは喜んで……。


「……ん、んん」


陽葵ちゃんが何か唇を動かしている。


え? これ、もしかして? 『キスで言葉当てゲーム』?


「陽葵ちゃん? もしかして?」


「へ、へへ。先輩何て言うたかわかる?」


陽葵ちゃんはキスをしながら唇を動かしながらこういった『好き』


「分からなかったな、もう一回して欲しいな」


俺はちょっと意地悪な顔で言った。


「あー! 先輩ずるいです。わかっとーくせに!」


「でも、俺、もっと陽葵ちゃんとキスしたい、えへ」


「もー、しょうがなかね。先輩はー」


そう言いながら陽葵ちゃんも嬉しそうだ。


俺達は再びキスをした。


「『好き』、そう言ってくれたんだよね?」


「さあ、どうでしょう、でも今度は先輩ん番ばい?」


「お、俺?」


「はい、先輩ん返事期待しとーばい」


そう言って再びキス待ちの顔になる。


俺は陽葵ちゃんにキスすると、『大好き』そうキスをしながら口を動かした。

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