ゲーム分析の勧めー迷惑人間の取扱説明書ー

永嶋良一

はじめに

 皆様、こんにちは。永嶋と申します。


 夫婦、恋人同士、会社の上司と部下、同僚、ご近所や友達との付き合いなど、私たちは日々たくさんの人間関係を構築しながら生活しています。特に、会社や役所、学校など家の外に職場がある人は、一日の大部分を職場で他人と過ごすわけですから、職場における他人との人間関係を良好に保つことが非常に重要になります。


 しかし、現実には、職場の人減関係に悩む人が非常にたくさんいらっしゃるのです。職場における人間関係の問題や悩みの根源には、陰湿ないじめや嫌がらせがあったりします。いじめや嫌がらせはパワハラ、モラハラといった言葉で表現されることもありますが、身体的あるいは精神的な暴力にほかなりません。こういったいじめや嫌がらせが解決されない限り、職場の人間関係は良くなりませんし、職場の雰囲気もよくなりません。


 最近、テレビや新聞でよくみるパワハラとは、パワーハラスメントの略語で、職場でのいじめです。具体的には、同じ職場で働く人に対して、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景にして、業務上の適正な範囲を超えて、精神的あるいは身体的苦痛を与える行為、または職場環境を悪化させる行為と定義されています。職場内の優位性といっても、パワハラは上司から部下という関係だけでなく、先輩・後輩や同僚間、あるいは部下から上司に対する行為も含まれます。


 また、モラハラとは、モラルハラスメントの略語で、主に言葉や態度によって人の心を傷つける精神的暴力です。相手を傷つける言葉、否定的な言葉の繰り返し、相手を無視する態度などで、精神的に嫌がらせや迷惑行為をすることも含まれます。モラハラをしている本人が気づいていない場合が多いのも特徴で、気づかないまま言葉や態度で相手を追い詰めることがあるため、始末が悪いとも言えます。また、意図的に言葉や態度で相手を精神的に追い込んで退職させたりする行為はパワハラと何ら変わることはありません。


 このシリーズでは、こういった職場の人間関係の問題を、臨床心理学のゲーム分析を使ってやさしく解き明かしていこうと思います。


 ゲーム分析というのは、臨床心理学の中の交流分析という分野に含まれる学術理論のことです。ここで、ゲーム分析の「ゲーム」という言葉ですが・・一般にゲームというと、楽しい遊びを指しますが、臨床心理学でいうゲームとは、裏に「罠」や「インチキ」といった否定的な面を内蔵した、人間関係の駆け引きのことをいいます。


 ゲーム分析によって、人間関係において、どのようなゲームが演じられているのかを把握すれば、多くのトラブルが起こる原因を理解することができ、対策を講じることができます。これによって、現在行われているトラブルをやめさせたり、将来のトラブルを未然に防止したりすることができるのです。


 このシリーズでは、私自身が実際に体験した人間関係の問題を事例として取り上げ、ゲーム分析で解説するとともに、そういった問題に巻き込まれないようにするにはどうすれば良いかをまとめました。


 ぜひ、ここで行なう解析を参考にして、職場の人間関係に困っている皆様がどのようなゲームに巻き込まれているのかを理解し、人間関係を良好なものに変えていっていただければ幸いです。


 尚、このシリーズで取り上げた事例の多くは、著者の職場に関するものですので、「職場の人間関係」という言葉を使って、ここまで職場を中心にお話を進めさせていただきました。しかしながら、ゲーム分析は職場の人間関係だけでなく、職場以外の人間関係にも広く応用できる理論なのです。ます。このため、読者の皆様に置かれましては、職場の人間関係に限ることなく、日常の中の皆様を悩ませるさまざまな局面で幅広くゲーム分析を活用していただければと思います。

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