「回収は済みました」

　わたくしは小さな小さな白い竜をあの方へと手渡した。どうして彼女を逃していたのか。

　覚醒を促す為？　でも、彼女はもう魔女ではなくなった。呼吸すら途切れそうなくらい弱い姿になってしまった。

「行きましょう、クロウ」

　いつもの廊下を渡りながら考える。この世界を瘴気でいっぱいにする事が出来なくなったのなら、またあの日々に戻るだけだ。

　あの方が魔女復活を成し遂げて下さるまでは――。

　わたくしの目にはクロウしかうつっていないのに、彼の目には違う女の姿がうつる。

　苦しい。

「ミリア……」

「なんでもないわ。大丈夫」

　世界なんて壊れてしまえばよかったのに。

　だけど、壊れてしまったとしてもクロウの瞳にうつる女は消えることがない。すべてが救われると思っていたのに……。

　私は今日も赤い瞳の聖女達を導く者として最愛の弟と空を翔ける。

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