第96話 再び相まみえる
竜の姿のブレイドが低い声で問いかけた。
「良くない噂を聞いた。ルフムイアが他の国と争い事を起こそうとしていると。見たところキミ達はルフムイアの兵だね。いったいどこに向かうつもりだい」
ルフムイアの兵と思わしき人たちが私達を見ながらざわついている。
一人が前に出てお辞儀した。この人たちのリーダーか何かだろうか。とりあえず、ラヴェルっぽい人は見えなくてホッとする。
「赤い
「ふむ、ならばなぜこのような人数を連れて行く必要があるのだ? 確認だけならば、数人程度でも十分であろう」
「これは本当の事を聞く為の脅しであります」
うーん、よくわからないけれど戦うつもりはないのかな。なら、行かせても大丈夫なのだろうか。けれど、大量の武器らしいものが並ぶ光景を見て不安しか浮かばない。
確認や脅しの為だけにこんな準備をするものなのだろうか。
「わかった。ならば確認はボクが引き受けよう。ルフムイアに戻って待っていてくれないか」
「いえ、竜にそのような事をさせては……、国に戻れば私達は殺されてしまいます」
そ、そんな怖い人なの? ルフムイアの王様って。ハヘラータの王子ラヴェルも色々アレだったけれど。
「赤い竜はまさか我々竜信仰の邪魔をするおつもりなのでしょうか」
「出来れば、ここで引き返してもらいたい」
「そうですか。ならば仕方がありません。我々が従うのは強い竜です。どちらが我々の神かはっきりしてもらいましょう」
「どういうことだ?」
真っ黒な髪、真っ黒な鎧を着た男が話していた男の横に立つ。
真っ黒な男が空を睨みつける。
「……どういうつもりだ」
空気が変わった。何だろう、今私持ってもないのに葉っぱを風に持っていかれた気がする。何だろう、この嫌な感じ。そう、お肉! お肉を死守しなきゃいけない気分になる。持ってないけど。
「ほら、言わんこっちゃない」
スピアーが私をがしりと掴む。
「な、何? スピアー!?」
「ブレイド、エマちゃん退避させるで」
「スピアー?」
ブレイドの背が遠ざかる。同時に大きな黒い竜が姿を見せた。
「あれってまさか!?」
「そー、まさかまさかの
ルニアやブレイドを傷つけた黒竜。まさか、こんなところで再び会うなんて。
ダガーはブレイドの事を恨んでいる。もし、本気になって殺されてしまったら……。
「スピアー! ちょっと戻らないと!!」
「戻ってどうする気や! ブレイドの背に乗っとったら命がいくつあっても足らへん! そんなとこにエマちゃん置いとける訳ないやろ!」
「だけどっ――! ブレイド! ブレイド!!」
また、赤い竜と黒い竜の戦いが始まってしまった。
私達はただ争いを止めたかっただけなのに――。
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