第95話 青竜の嫌な予感
ブレイドの背に乗って空を進む。冷たい空気を遮るように丸い竜が私の前で同じくブレイドの背に乗っている。
ありがたいけれど、ブレイドだけ空を飛ぶのはどうなんだろう。でも、スピアーがいなかったらきっと寒くて鼻水やら何やらで大変なことになってるだろう。たぶん、彼は魔法で何かしてくれてる。
「ねぇ、まだ見えない?」
「瘴気と違ってただの人間やろ。感知なんて出来んからなぁ」
「見落としはしてないと思う」
人がルフムイアからハヘラータに移動するならこの道だろうと予測して飛んでいる。
ミリアやクロウが飛んできたりしないか少し心配はあるけれど、フレイルの薬を飲んできたから大丈夫。
「ミリアの話が嘘だったりしないのかな?」
それなら引き返せるかなとも思うのだけれど。
「あれは嘘言ってる感じやなかったな。嘘言って何になる? 自国の事やないのにって」
「それは、そっか……」
スピアーの首が少し動いただけで冷たい風が横を通り過ぎる。
私は一度首もとの服をつまみ上げ口まで覆った。
「もしかしてあれかな」
「お、見えたか?」
ブレイドの視界に何かが入ったようだ。スピアーも首を伸ばして前を見た。
途端、スピアーの背の毛がすべて立ち上がった。
「ヤバいかもな……」
「え、何?」
「エマちゃん、行くんか?」
「何って聞いてるのに。行くよ。ここまで来たんだもの。竜信仰だからなんとかなるかもって言ったのスピアーだよね」
「あー、そうなんやけど――」
何だかよくわからないけれどスピアーが言葉を濁す。
「ブレイド、やっぱりオレとエマちゃんだけにせんか?」
「何で!?」
私はスピアーに問いかける。
「スピアーとエマを二人にするなんてボクがすると思う?」
「やろうけどなぁ……。エマちゃん、ちょっと……というかだいぶ面倒な事になるの覚悟しといた方がええで」
「だから、何で!?」
「たぶんな、あそこには……」
そうこうしてる間にだいぶ近付いてしまった。
「さっと終わらせて帰れば問題なんてないよ。行こうよ」
「行かん方がええと思うけどなぁ」
「降下するぞ」
人がかたまっている場所に近付く。まさか、あそこにラヴェルがいたりするから面倒になるとかなのかな。でもそれなら私とスピアーの組み合わせにする必要なんてないだろうし。
驚きの声が聞こえる距離まできた。何かが起こった時にすぐ対応出来るようにスピアーも人の姿になって背の翼を広げる。何も起きずに話を聞いてくれて争いを回避出来ればよいのだけれど――。
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