第87話 青竜の語る過去(スピアー視点)
「メア、メル待って」
「母様、こっちだよ」
「母様、こっちこっち」
花畑を二人の子どもが駆け回る。子ども二人が母様と呼ぶ人物。この人物が赤い瞳の聖女アメリア。
そして、駆け回る二人の女の子どもはアメリアの子。彼女は二人の子どもの母親やった。
「スピアー、二人を捕まえて」
「まかしとき!」
「え、ずるい! スピアーだめぇ」
「ずるい、ずるい!! スピアーが母様の味方ならわたしたちだって、ねーブレイド!」
「フレイルー! こっちも」
オレと同じ様にアメリアに惹かれて集まった竜達。
全員でアメリアとその子ども達を守ろうと約束しあっとった。
そしてアメリアも、嫌な顔一つせずオレ達と一緒にいてくれたんや。
アメリアは世界中の瘴気を消すため、旅をしとった。
遠くに行く時は一人がアメリアに付き添い、残りが二人の子どものそばにいる。
時が経ち、アメリアの腕に謎の模様が浮かんだ。まるで腕輪のようにそれはぐるりと繋がる。
それが合図やった。
瘴気を消してくるごとに、もう一方の腕、右足、左足と輪が増えていく。
そして、彼女自身も感じていた。――――限界だと。
「竜は瘴気を食べて魔法の力に変えられるんだよね」
アメリアが言った。
「あぁ、そうや。だから、アメリアの中の瘴気だって食べてあげたいのに、……なんでできないんやろな……」
瘴気は彼女の中で固まってしまっている。彼女の中にある瘴気は噴き出した瘴気とは違い、美味しそうで今にも食べたくなるような気にさせる何かがあった。
「そっか、なら……お願い。私が瘴気そのものになってしまうなら、そうなる前に私を食べてね」
「わかっとる」
オレが一番最初にお願いされとった。
だけど、その時にそばにおったんは――オレやなかった。
瘴気を浄化する旅をアメリアは続けた。竜は瘴気を食べる事が出来るのに、彼女はオレ達に頼む事をしなかった。
私がしなきゃいけない事だからと言って。竜のオレ達にも悪い事が起きるかもと彼女は考えていたのかもしれんなぁ。
旅に出るたびにその時の相方にアメリアは自分を食べるようお願いしていった。
だから、次は一緒に行くと毎回言うヤツもおった。黒竜、ダガー。アイツはアメリアを誰にも渡さないと言うとった。狂信的にアメリアの事が好きやった。
オレも好きやったで。でも、瘴気になってまう前に食べろって言われて食べられるかというと、やっぱり嫌やった。他に出来る方法はないかって、思ってたんや。
だから、オレは相方やないとき飛び回っとった。アメリアの大事な二人を他の人間に預けて……。
その時がきた日、相方はブレイドお前やった。
旅から帰ってこん日が続いた。どうにも嫌な予感がしてアメリアを探しにオレは彼女とブレイドが向かった先に飛んだ。
瘴気が噴き出す場所があった。オレは違和感を感じ近寄った。
瘴気の噴き出し口に赤竜――ブレイドがうずくまっとった。
「おい、何してんねん。アメリアはどこや!? なんでまだ瘴気が噴き出しとる?」
ブレイドはうずくまったまま動こうとせんかった。
その時、理解した。あぁ、その時がきてしまったんや。
なんも言わんまま、ブレイドは自身に業火の魔法をかけて死んだんや。
彼女は瘴気を魔法の力に変えてと願っとった。それが自身を食べた竜は己を燃やす為に使った。アメリアはブレイドと一緒に燃えてしまった。
竜はまたどこかで生まれ変わる。けど、アメリアは――。
オレは後悔した。他の誰かに食べられるくらいなら、オレが食べれば良かった。それで、その魔法の力で、もっと他に――。
子ども達の元に飛んだ。そこには誰もおらん。もぬけの殻やった。
オレは考える事をやめて、人の前から姿を消した。
アメリアがいたから、他の竜とも合わせられとった。彼女がいない場所にオレは耐えられんかった。
アメリアが消えた場所に大きな石と花の種を置いた。
皆で育てとった花畑の花の種。
「オレが出来るんはこれくらいや」
水の魔法で雨をふらせる。石にも魔法をこめておこうと近づいた。
オレが魔法を入れる前に何かに反応したのか石が魔法の力を得ていた。
「なんや、まだ残っとったんか」
ブレイドの燃えたあとに石を置いた。燃え尽きたと思っていたがまだそこに力が残っていたのかもしれない。
「でっかい竜魔石ができてもうたなぁ」
アメリアを食べた力は死んだあとも残るほど強い力になったのか。
「ブレイド、次に生まれ変わりしたら
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