第84話 謎よりご飯

 もし、その時が来てブレイドに食べられるような事態が起きたら、その前までにいなくなろうなんて思ってた罰なのかな。

 ブレイドがミリアを迎え入れれば私はここの人達の魔物化さえ治し終われば用は無くなってしまう。今作ろうとしているモノだって必要なんて無くなって……。


「そうだ、エマ様あなたにはクロウと子どもを作っていただきたいのですが。一度婚約者を退いていただいても――」


 子ども? クロウと? いったい何を言っているの?


「わたくし達の次の子はとても期待されているのです。それに相応しいブレイド様はわたくしと、クロウは今まで誰にも興味を持たなかったのにエマ様ならと言っているのです。瘴気に耐性があるというあなたならもしかして――なのでお願いします。ブレイド様をわたくしにくださいな」


 ただただ怖かった。次の子、もう子ども達の未来は聖女になる決まりに縛られている。血族を増やして瘴気と戦う運命に立ち向かっていく……。

 だけど、ブレイドを……、ブレイドは私の初めて自分で好きになりたいって決めた人で――。


「ふざけるな!! エマは誰にも渡さない。ボクの好きな人だ。それにボクはあなたを迎え入れるつもりはまったくない!!」


 ミリアは面食らっていたが、少しして元通りにまた笑顔を浮かべる。


「すぐには結論はでませんよね。わたくし達も準備がありますもの」


 ミリアはちらりとクロウに目をやる。クロウはわかったといったように目で返し竜へと姿を変える。ミリアを背に乗せ空へと飛び上がった。


「何度でもこちらに足を運びますわ。わたくし、諦めませんから!! あ、そうそうエマ様! あなた方が作ろうとしているものの設計図拝見させていただきましたけれど」


 突然名前をあげられ、設計図と言われる。どれの話だろう。というか、私が竜魔道具を作っている事を知られている?


「あれに似た物を描いた研究者がわたくし達の国におりますよ。そうそう、エマ様に似た髪色の――。他にもたくさんの竜魔石の研究者がうちにはいます。もし、ご興味が湧きましたら是非いらして下さいね。ブレイド様と一緒に。それではまた」


 二人は去っていってくれたけれど、まだ心臓がドキドキとしている。私が図を描いているのは、今作っているものと、あの日見て知ったハヘラータにある装置の外見。見た目のスケッチだ。

 私に似た髪色であの装置を知っている人物……。まさか――。確かめたい。だけど、だけど――――。


「皆さーん! ご飯が出来ましたよー! あったかいうちにどうぞー!!」


 リリーの呼び声で、私のお腹が条件反射のように盛大になる。まって、今そんな時じゃ……。


「腹が減っては考えもまとまらないだろ。ほら、皆行くぞ」

「ちょっと、ルニア……でも……」

「ほら、せっかくのうまい飯が冷えちまうぞ」


 ぐいぐいと食堂へと連れて行かれる。食べたからって、どうすればいいかなんて浮かぶのかな。

 食堂が近付くと、いい匂いが漂っていた。

 うん、今はリリーのご飯が優先ね!!

 お腹が空いてたら次こられた時に負けちゃうかもしれない。

 私はふんっと力をいれて、リリーの作ってくれた料理へと全力で向かった。

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