第66話 伝える為に頑張る!

「あ、あれ? エマ何して?」

「え?」


 軽い口付けをすると、ブレイドの表情がいつもの彼に戻っていた。


「あ、あの、えっと、その……」


 やってしまった。まだ気持ちをきちんと伝えていないのに行動だけ先にしてしまうなんて……。私はなんて言い訳しようか悩んでいると、視界が塞がれた。

 今度はブレイドからだった。二回目の時より強くて熱い。

 息がとまりそうになる。


「ブレイド……とま……ちょっとまって……」

「うん? エマからしてきたのに?」

「息が、……とまっちゃうよ」


 もう一度軽く口付けをしてブレイドの顔は離れた。息を吸って彼を見ると少し意地悪そうな笑顔を浮かべていた。


「エマ……。もっと一緒にいたい。もっとエマを知りたい。エマの味を確かめたい」

「あ、味って……」


 やっぱり、食べられる!?

 見つめてくる瞳が熱っぽくて、まっすぐに見るとさっきの口付けを思い出してしまう。体が熱くなる。もっとブレイドに近付きたい。食べられたって……。


「ブレイド、私……」


 言ってしまおう。きっとこれが好きって気持ちなんだ。


「ブレイド様! ブレイド様ぁ!!」


 いざ、言おうと口を開けるとシルの声が先に響いた。


「どうした!? シル」


 体が離れて、そのまま彼は扉を開いた。


「ブレイド様! もう一人いたみたいなんです!! この前のと似た魔物化した人が!! 今瘴気が出てて、そのそばにそいつが」

「何!?」

「エマ様にも声をかけようと探していたんですがどこにもいらっしゃらなくて」


 はい、私はここにいます……。


「エマ、いけるか? 無理なら」

「大丈夫、出来るよ」

「エマ様、そこにいらっしゃったのですね」

「えぇ」


 スカートをパタパタと手で伸ばし、平静を装いながらシルの前に出る。


「行きましょう。大変な事が起こる前に」

「あぁ」


 伝えそびれてしまったけれど、私はどこかでホッとしていた。自分の力で痩せてない状態で告白したら彼の言葉に甘えすぎてて、なんだか負けたような気がするから。

 頑張る私を見ててほしいな。


「僕はルニア様をよんできます」


 シルはパタパタと走り出した。


「行こう」


 手を差し出され、私はそれに答える。


「はい」


 どこへだって一緒にいきたいのは私もだから。

 二人で走り出す。前を行くブレイドが少しだけ振り返りながら笑顔を見せた。


「エマ、ボクはエマを好きになってもいいかな? いや、違う。もう好きだ。きっと――」


 そう言ってまた前を向いてしまった。

 嬉しかった。ずっとずっと前から待ってた気さえする。

 あなたに言ってもらいたかった言葉。


「私も――」


 それだけ言って、口をつぐむ。その先はちゃんとダイエットしてから言うから……。

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