第15話 青竜の言うことには

「ルニアー!!」

「あ、おかえりー」


 ルニアは先に戻っていたみたい。シルに包帯をぐるぐる巻かれている。


「良かった。エマが無事で」


 笑顔で迎えてくれホッとする。ルニアが生きてて本当に良かった。一緒にハッピーライフするって言ったんだから、勝手に一人で死んだりしないでほしい。


「ルニア……ご……ぞぁぁぁぁぁ」


 涙が溢れてしまった。私の涙腺どうなってるの? 尋常ではないのだけど、この量。

 あぁ、抱きつきたいのにこれじゃあ涙で包帯が濡れてしまうよね。私はなんとか涙を止めようとする。けれど、なかなか止まってくれない。

 ルニアは困った顔をしながらも動く方の手をのばし子供にするように頭を撫でてくれた。


「それで、ブレイド。それは? ずいぶん丸いもん持ってるな」

「あぁ、これは」

「これはって言うな。オレはドラゴンやっ!! 誰が好き好んでこんなかっこーするか!!」

「うわ、喋るのか」

「しゃべるっつの」

「面白いな。で、これは?」


 ルニアは容赦ない。またこれは? と言ってブレイドに聞いてる。


「たぶん青竜ブルードラゴンだとは思う。はっきり言うと初対面だ。だからボクもコイツの名前は知らないな」

「だーもう!! だから、オレはこれでもコイツでもないっ」


 青竜はそう言ってバタバタと暴れる。だけどブレイドががっちりと首を押さえてるので逃げ出せそうになかった。


「名前なんと言うの?」


 この竜は黒竜と違ってブレイドと戦ったり、ルニアを怪我させたりしてない。だから、深く考えず名前を聞いた。あとで考えれば、私は食べられるところだったんだけどね。


「教えるか。まあ、どうしても聞きたいならー、言う事聞くなら教えてやってもいいぜ」


 一瞬の間が流れた。


「なぁ、ブレイド。竜だったら回復魔法とかそういう竜魔石とかないのかよ?」

「ボクはそういう魔法はあまり――」


 スルーだ。二人は完全にスルーすることにしたみたい。

 私もそれに乗ることにした。


「ごめんね。私の魔法もそういう力なくて……」


 ごごごごごと何かが燃えるような感じがする。発生源は青竜だった。


「オレは青竜、スピアーだ!! 人の話聞けやっ」


 こうして青竜の名前が判明した。彼はスピアーという名前らしい。


「なんや、お前らは怪我が治したいんか。やったら話ははやいやないか。オレが魔法で治すかわりにそこの女がオレの竜化を解除する。それでどうやっ」


 また間が流れる。


「まあ、これくらいならすぐ治るだろ」

「ごめんね。私が――」

「治るまでボクがルニアの代わりをいくつか受け持とうか?」


 相談を始めると青竜スピアーの顔が怒り狂っていた。でも、小さいから迫力なんて皆無だけれど。


「人の話きけっつーのっっ!!」

「エマをさらった竜が口を開くなよ」


 ルニア、怒ってる。これはかなり怒ってる。

 スピアーもびっくりするほどの殺気がルニアから出ていた。つい私も一緒に背筋を伸ばしてしまう。


「はー。それでコレどうするんだ?」

「何が目的だったか聞いて、そのあとは――」


 ブレイドも冷ややかな目で見ていた。あ、これスピアーってば詰んでない?


「オレを殺せばその女も一生丸いままだぞ」


 私は一瞬でスピアーをブレイドから奪う。自分でも驚く速さだった。


「なんの事? 詳しく聞かせなさい」


 痩せるって決めたのに、丸いままなんて言われては気になってしまうよね。

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